日本大百科全書(ニッポニカ) 「パレート最適」の意味・わかりやすい解説
パレート最適
ぱれーとさいてき
Pareto optimum
他の個人の満足を減ずることなしには、いかなる人の満足も増すことができない状態をいう。いいかえれば、どのような資源配分の変更を行っても、現状以上に社会的により好ましい状態を達成できないことをいう。個々人の価値判断を社会全体として一つの価値判断に形成するのはきわめて困難であるが、パレート最適は比較的柔軟性のある規準であって、人々の同意を得やすい概念といえよう。これは、V・パレートによって創唱されたものであり、新厚生経済学の発展とともに普及し、パレートの名を冠する名称が定着した。パレート最適は完全競争市場において達成され、そこでは各個人は最大の満足を得、企業は利潤最大化が達成されるなど、重要な法則が成立する。しかし、パレート最適は資源配分のみに関与し、所得分配についてはなんら触れることがない。また、パレート最適の状態は無数に存在し、それらの間の優劣は決定できないなどの限界がある。
パレート最適が達成されるためには、個人間の限界代替率が等しくならなければならない。両個人の間の限界代替率が等しくなった点を結んだ曲線を「契約曲線」という。契約曲線上のすべての点はパレート最適である。もし初期賦存量がJ点ならば、それに対応するパレート最適点は契約曲線上の任意の点となり、一義的に決定することはできない。
さらに経済全体でパレート最適が達成されるためには、X財とY財の消費の限界代替率が、X財とY財を生産するための限界変形率(生産可能性曲線の接線の傾きの絶対値)に等しくならなければならない。
もしもすべての市場が完全競争的ならば、該当する限界代替率が該当する価格比に等しくなるから、パレート最適が達成される。
なお、一部分においてパレート最適条件が成立していないときに、それを前提として、残りの部分における最適問題を考察するのがセカンド・ベスト理論である。
[畑中康一]