普及版 字通 「奚(漢字)」の読み・字形・画数・意味
奚
10画
[字訓] めしつかい・なんぞ
[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[字形] 象形
卜文の字形は、頭上に髪を結いあげた女子の形。金文にもその図象化した字がある。結髪の形は羌族のそれに近く、辮髪(べんぱつ)を示すものと思われる。羌族(きようぞく)は卜辞に捕獲の対象としてみえ、また大量に犠牲とされた。殷墓にみえる数千の断首葬も羌族と考えられ、家内奴隷としても多く使役されたのであろう。〔周礼、天官序官、酒人〕に「奚三百人」、また同じく〔漿人〕に「奚百五十人」など、多数の奚が用いられており、奚の名が残されている。〔説文〕十下に「大腹なり。大に從ひ、(けい)の省聲なり。は籀(ちうぶん)、系の字なり」とするが、奚を大腹の義に用いた例はない。卜辞や〔周礼〕によって、羌系女奴の名が残されていることを知りうるのである。
[訓義]
1. めしつかい、女のめしつかい、女奴、もと羌系の族の俘獲されたものであろう。
2. 大きな腹、ふくれた腹。
3. 何・胡・曷・盍と通じ、「なに」「なんぞ」「いずくんぞ」のような疑問詞・疑問副詞に用いる。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕奚 ナゾ・イヅクゾ/奚爲 イカガ 〔字鏡集〕奚 オホハラ・ナンゾ・イカンゾ・イヅクンゾ
[声系]
〔説文〕に奚声として・・谿など十二字を収める。はその鳴き声を写した擬声語。・谿は徑(径)の声義と関係があろう。
[語系]
奚・hyeiは同声。卜文の奚をに作る字もあり、奚はもと女奴をいう字であった。また奚を疑問副詞に用いるのは何hai、胡ha、曷hat、盍hapと音の通仮によるもので、このうち何・曷は神に祝してその成就を責める意があり、本来、疑問副詞的な意味をもつ語である。
[熟語]
奚官▶・奚疑▶・奚距▶・奚奚▶・奚吾▶・奚翅▶・奚▶・奚似▶・奚児▶・奚若▶・奚如▶・奚鼠▶・奚奴▶・奚童▶・奚毒▶・奚▶・奚婢▶・奚落▶・奚隷▶・奚蠡▶
[下接語]
駅奚・跛奚・嬖奚
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報