一般的には中国殷代の卜占の記録をいう。亀甲や牛の肩甲骨を使用して卜占を行い,その亀甲や牛骨に,卜占の内容を小刀で契(ほ)って記録してあるので,甲骨文とも,契文ともいう。1899年(光緒25)河南省安陽市北西郊の小屯村一帯で発見,以後考古学者により発掘されたものをふくめ,約10万片が得られ,殷代研究の基本資料として解読・研究が行われた。殷第30代の王武丁より最後の帝辛(紂王(ちゆうおう))まで約250年間のもので,5期に編される。内容は祭祀,祈念,風雨,狩猟,征伐,疾病などに分類される。このほか卜占の記録ではなく,亀甲・牛骨の貢納や処理・保管を記録した記事文とよぶものも少数含まれている。卜辞に使用する文字の種類はおよそ2500字,そのうち一応解読されたものは約1400字であるが,異説の多いものが相当数あり,完全な解読はできていない。このほか近年になって陝西省岐山・扶風両県で西周時代の卜辞が多数発見され,研究が始まった。
→甲骨学 →卜骨
執筆者:伊藤 道治
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… また後期になり,初めて文字が発見される。これが甲骨文字で,漢字の現存の最古のものであり,それを使って書いた記録の大半が卜いの記録であるので,卜辞ともいう。この文字は,現在,河南省鄭州市の後期の遺跡で数点発見される以外は,すべて安陽市北郊小屯村一帯でしか発見されず,しかも原始的な絵画文字からは進化した文字であり,その祖形は未発見であるため,この文字の起源もやはり大きな問題である。…
…やがてそのテキストである《易経》が整備され,漢代にそれが経典となるにいたり,筮=易の地位は不動のものになっていった。亀卜の占例は殷代の卜辞(甲骨文字)によって知られるが,それによれば,祭祀,軍事,狩猟,天候など国家的行事の吉凶が占われた。周代の占筮の具体例は残っていないが,《左氏伝》や《国語》には《易》にもとづく10余りの実占例がみえ,そのなかには周代の占法を伝えるものもあるといわれる。…
…甲骨文とは,中国の殷代に亀甲や牛の肩甲骨に文字を彫って記録した文。卜辞,契文ともよぶ。この甲骨文は,1899年(光緒25)に河南省安陽市北西郊の小屯村で初めて発見された。…
…文字(漢字)が作り出されたのはごく古く,前20世紀以前だと思われる。今日残存する最古の記録は殷代の〈卜辞(ぼくじ)〉であるが,それに用いられた漢字は単純な絵文字ではなく相当進歩した段階にあった。卜辞は君主のために神意を問うた占いのことばで,短いものが多い。…
※「卜辞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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