改訂新版 世界大百科事典 「婦人科内視鏡」の意味・わかりやすい解説
婦人科内視鏡 (ふじんかないしきょう)
婦人科領域で用いられる内視鏡をいい,またこれを用いた検査をさすこともある。子宮鏡(頸管鏡や卵管鏡も含む),腹腔鏡,胎児鏡,膀胱鏡などが含まれ,疾病の検査だけでなく治療にも応用され,さらに近年では,これら内視鏡による直視下での手術も試みられ,一部実用化されている。婦人科内視鏡では,映像伝達系にレンズを用いた硬性鏡が一般に用いられ,照明光は外部光源(ハロゲン灯,水銀灯,キセノンランプ)からグラスファイバーによって伝達され,内視鏡先端から局所を照明する。それぞれ直視鏡,斜視鏡,側視鏡がある。一般には,外套管を先にして装着し,透明な媒体(二酸化炭素,生理食塩液,デキストラン液など)を注入して膨らませ,俯瞰的に観察する。
(1)腹腔鏡検査 婦人の骨盤腔内臓器を腹腔から観察するには,腹壁経由(ラパロスコピーlaparoscopy)と後腔円蓋経由(クルドスコピーculdoscopy)の2通りがあり,それぞれ一長一短がある。腹腔鏡検査は,画像診断法など他の検査法では診断しにくい小骨盤内性器の病態診断に用いられる。原因不明の不妊症,子宮内膜症,子宮外妊娠,初期卵巣癌,癌性腹膜炎などである。組織診も行われるが,近年,直視下に特殊手術器械を用いて癒着剝離(はくり),卵巣囊腫摘除術,卵管凝固不妊術などが行われるようになった。ラパロスコピーは,3~4lの二酸化炭素,笑気,空気などで気腹を行った後,臍部付近から外套管,腹腔鏡を入れて観察する。気腹時の皮下気腹やガス塞栓,外套管刺入時の血管(とくに大動脈)や腸管穿孔(せんこう)に注意が必要である。クルドスコピーは,骨盤高,胸膝位で後腔円蓋から,自然気腹を起こさせて観察する。外套管刺入時の直腸損傷に注意する。
(2)子宮鏡検査(ヒステロスコピーhysteroscopy) 急性炎症や妊娠を除き,子宮腔内に病変があると推定されるとき,すなわち不正出血(機能性出血,子宮体癌,ポリープ,粘膜下筋腫,流産など),子宮造影像異常(癒着,ポリープ,筋腫など)などが存在するときに行う。子宮を拡張するための媒体には二酸化炭素,デキストラン液,生理食塩液などがあるが,日本では後2者の液体を用いることが多い。これら媒体を子宮内に持続注入しながら子宮腔を広げて観察する。副作用はほとんど考慮しなくてよい。
→内視鏡
執筆者:杉本 修
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報