版材そのものに孔のあいている印刷版。凸版や平版,凹版に対していう。古くから利用されている謄写版のように,蠟紙に細かい孔をあけ,枠に固定してインキローラーをころがせば,インキは孔を通り抜けて蠟紙に密着させておいた紙に模様や字を印刷することができる。謄写版において蠟紙に孔をあける方法としては,やすりと鉄筆を使う手書きに始まり,次いでタイプ孔版になり,蠟紙に強くタイプを打って孔をあける方法が利用されたが,やがて写真製版による孔版が盛んとなり,それもしだいにオフセット印刷におきかえられつつある。孔版のもう一つの種類としてシルクスクリーン印刷がある。切抜きの型紙をシルク(絹)のスクリーンにはって印刷する方法で,最近ではシルクのほかにナイロンやステンレスを使うので単にスクリーン印刷という。
執筆者:山本 隆太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…したがって,製版が最も重要な役割を占め,版式のちがいによって使用する印刷機も異なる。基本的には凸版,平版,凹版,孔版の4種の版式があり,表にその特色を示す(図1)。 インキのつく部分を残して他の部分は彫りくぼめる形の版を凸版という。…
…古来の東洋の拓本がそれであり,20世紀ではシュルレアリスムが開発したフロッタージュもそれである。これらが原版の凹凸を手にもったタンポンで写しとるのに対して,原版に開けられた孔を通して台材にインキが塗られるステンシル(合羽(かつぱ)版,孔版)は,前述の旧石器時代の手型をはじめとして江戸小紋などの捺染(なつせん)の制作過程にも用いられ,さらに現代ではシルクスクリーンsilkscreen(セリグラフィーserigraphy)にも使われている。 以上の印刷方式はインキとなんらかの圧力とを用いてなされるが,光と薬品とによる化学的処理のみによる技法がある。…
※「孔版」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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