日本大百科全書(ニッポニカ) 「孔版印刷」の意味・わかりやすい解説
孔版印刷
こうはんいんさつ
型紙を枠に張り、上からインキを押し出して印刷する方法。版そのものに孔(あな)があいているので、この名称となった。この種の印刷法には謄写版、スクリーン印刷などが含まれる。謄写版は、蝋(ろう)紙を金属製やすりの上に置き、文字や図を鉄筆で書くと、その部分だけ蝋がはがれる。布を張った枠にこれを張り、ローラーでインキをつけると、蝋のはがれた部分はインキが通過して紙に移る。鉄筆で書くかわりにタイプライターの活字を強く押し付けてもよい。これはタイプ孔版、孔版タイプ、孔版タイプ印刷などとよばれ、軽印刷として利用された。また感光性樹脂を使って型紙(文字や絵)をつくる製版技術も開発され、年賀状などのアマチュア印刷に利用された。現在はパソコンとプリンターが家庭や学校でも使われるようになり、謄写版は趣味の世界でしか行われていない。一方、スクリーン印刷は、芸術のほか、産業用途として屋外看板や垂れ幕、精密機器のプリント基板などに使われている。
[山本隆太郎・中村 幹]