日本大百科全書(ニッポニカ) 「字幕CM」の意味・わかりやすい解説
字幕CM
じまくしーえむ
難聴者や聴覚障害者に説明するため、使用されている音声や音響をわかりやすい文字や図形で解説し、映像と一緒に放送するテレビCM(コマーシャル・メッセージ)。字幕付きCMともいう。聴覚に障害のある人に向けた字幕放送には、表示と非表示をテレビのリモコンで切り替えられるクローズドキャプションと、外国語映画のように字幕が常時表示されたままになるオープンキャプションの二つの方法がある。しかし、テレビの放送システム上、字幕は1行あたり15文字までしか表示できず、行を多くすれば映像の妨げになることから、短時間で情報量の多いCMについての字幕放送は進んでいない。さらに、携帯端末向けのワンセグ放送では、地上デジタル放送用の字幕のデータとは仕様が異なるため、製作やデータの搬入について新しい規定が必要とされる。
総務省は2012年(平成24)に「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」を見直し、CMや災害時の緊急時放送においても、字幕付与や手話放送への取組みを促している。日本民間放送連盟の調べによれば、2012年度の字幕付与可能な番組(生放送や深夜帯、外国語の番組等を除いたもの)における在京テレビ局5社の字幕番組の割合は93.3%に達しているが、放送時間の約2割を占めるCMで字幕をつけたケースは、一部のトライアル放送に限られているのが現状である。世界的にみても、アメリカ、イギリス、韓国、フランスなどでは一般的なテレビ番組での字幕放送を法的に義務づけているが、字幕CMは義務化されていない。
日本の放送法第4条2項には、「放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送等の放送番組の編集に当たつては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない」と規定されており、総務省は2017年度までに字幕付与可能なすべてのテレビ放送での実施を目ざしている。
[編集部]