放送事業の健全な発達を図り、公共の福祉に適合するよう規制する法律。戦時中にラジオが政府宣伝に使われた反省を踏まえ、1950年に制定された。第1条で「放送の不偏不党、真実と自律を保障することにより、放送による表現の自由を確保する」と明記。第4条は番組編集に当たり「政治的に公平である」「報道は事実をまげない」「意見が対立している問題は、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」と規定。番組適正化のため審議機関の設置も定めている。
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日本の放送の基本的あり方について定めた法律。昭和25年法律第132号。日本の放送が公共の福祉に適合し、健全な民主主義の発達に貢献することを目的とし、そのために放送番組編集の自由を基本に据えて制定されている。放送を直接規律する現行の基本的法律は、電波法と放送法であるが、第二次世界大戦後、日本の放送が再出発したときには、このほかに電波監理委員会設置法が設けられ電波三法といわれた。放送法は、それまでの社団法人から特殊法人へと変わった日本放送協会(NHK)と、戦後新たに設置が認められた民放を含む放送全体を規律する基本法となった。放送法はその後、放送事業者に放送番組審議会の設置を義務づけた1959年(昭和34)改正、番組編成上のバランスを求める番組調和原則の適用範囲を限定するなどした1988年改正、通信・放送の法体系を全体的に見直して「放送」の定義も変更した2010年(平成22)の改正などを経て現在に至っている。なお、放送行政の権限は、当初は政府から独立した独立行政委員会である電波監理委員会にあるとされたが、電波監理委員会設置法が1952年7月に廃止され、それ以降は郵政大臣にゆだねられることになった。そして2001年の省庁再編後は総務大臣が権限をもっている。
放送法は11章193条と附則からなる。第1章は総則で放送法の目的を記しているほか、関連用語の定義を行っている。第2章は放送番組の編集等に関する通則で、番組編集の自由、番組基準、番組審議機関の設置、番組の保存、再放送、広告放送の識別などについて規定している。このうち第3条では放送は「法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」としている。また第4条では「公安及び善良な風俗を害しないこと、政治的に公平であること、報道は事実をまげないですること、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」と定めている。
第3章は、日本放送協会の設置の目的、業務、経営委員会、組織、役員、受信料、国際放送などを15条から87条まで細かく定めている。続く第4章は、放送大学の放送を行う放送大学学園について規定している。第5章は、基幹放送、すなわち地上テレビ放送、BS・CS放送、AM・FMラジオ放送などについて、認定、放送番組の編集、災害放送、事故、設備などについて規定している。第6章は、一般放送、すなわち基幹放送以外のCS124、128度等の無線放送とCATV、インターネット放送などの登録や業務について規定している。第7章では有料放送について、第8章では認定放送持株会社について定めている。第9章は放送番組の収集、保管、公衆への視聴機会の提供などの業務を行うものとして、総務大臣が指定する放送番組センターについて定めている。この規定に基づいて、センターが設けた放送ライブラリー(横浜市)が一般に公開されている。第10章が雑則、第11章が罰則となっている。
[米倉 律 2024年2月16日]
一般大衆が直接受信するラジオ,テレビなどのような無線通信事業の運営や番組を規律する法律。第2次大戦後占領下の1950年6月1日施行。同日施行された電波法,電波監理委員会設置法(1952年7月31日廃止)とともに電波三法と称された。放送に関する初の特別法。それまでは,放送は無線電信法(1915年公布)の〈無線電信及ビ無線電話ハ政府之ヲ管掌ス〉(1条)の原則のもとで,放送用私設無線電話規則(逓信省令)による逓信大臣の強力な監督下に置かれていた。これに対して放送法の特徴は,(1)放送の民主化という占領軍の示唆をうけて放送を政府から分離し,放送番組編集の自由を保障したこと,(2)これまでの社団法人日本放送協会に代わって放送法に基づく特殊法人日本放送協会を設置したこと,(3)民間放送(一般放送事業者)の設立に初めて道を開いたこと,などにある。その後,テレビの普及,民間放送の発達などで放送が飛躍的に発展をとげる過程のなかで放送法の見直し論が生じ,62年9月郵政省に臨時放送関係法制調査会が設置され,その答申(1964年9月)をうけて放送法改正法案が66年3月第51国会に提出された。しかし,NHK受信料(放送受信料)の支払い義務化,民間放送に対する事業免許制の導入,放送世論調査委員会の設置などの各条項をめぐる対立から,結局は審議未了で廃案になった。その後のおもな改正としては以下のようなものがある。
81年改正で放送大学放送を実施する放送大学学園に関する規定が新設され,放送の事業主体がこれまでの日本放送協会,一般放送事業者(民放)に加えて放送大学学園が加わり3本建てとなった。88年には制定以降初めての大幅な条文整備が行われた。また89年改正では,新たに受託放送事業者と委託放送事業者の規定が創設されて,いわゆる〈ハード・ソフトの分離〉が制度化され,放送法も衛星時代に向けて変貌しはじめた。
執筆者:内川 芳美
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…放送法(1950年6月施行)に基づく特殊法人で,公共の福祉のために日本全国において受信できるように放送を行うことを目的とする(放送法第7条)日本で唯一の公共放送事業体。正しくは〈にっぽんほうそうきょうかい〉と読み,そのローマ字表記の頭文字をとってNHKと略称される。…
…公的な定義としては放送法2条に,〈放送番組とは,放送をする事項の種類,内容,分量及び配列をいう〉という規定がある。1950年の放送法制定時にはこういう定義でよかったのだろうが,その後の放送界での普通の用法では,配列は〈番組編成〉と呼ばれ,ある放送局の放送全体を編成する際の単位を〈放送番組〉という。…
※「放送法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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