日本大百科全書(ニッポニカ) 「宗教生活の原初形態」の意味・わかりやすい解説
宗教生活の原初形態
しゅうきょうせいかつのげんしょけいたい
formes élémentaires de la Vie Religieuse フランス語
フランスの社会学者E・デュルケームの著作。1912年刊。「オーストラリアのトーテム体系」と副題されるように、未開の単純な形態の宗教にさかのぼり、宗教現象の特質、宗教と社会生活の関係、認識や思惟(しい)など精神生活とのかかわりの解明を試みた宗教社会学上の古典。「宗教」をもって世界の諸事物を「聖」と「俗」の二つの領域に分かつ信仰と儀礼の体系と規定し、この「聖」の表象を生み出す沸騰的な集合生活の状態を考察し、宗教というものが本質的に社会生活の所産であることを強調した。晩年の大著で、公刊後3年にして早くも英訳が出るなど、国際的な反響も大きかった。
[宮島 喬]
『古野清人訳『宗教生活の原初形態』全2冊(岩波文庫)』