p-n接合ダイオードの降伏特性を利用して,ダイオードの端子電圧が電流にほとんど依存せぬようにしたダイオード。p-n接合ダイオードに逆電圧を加えると,ある一定の電圧,すなわち降伏電圧を超えると急激に電流が流れる。降伏電圧が5.5V程度より大きければ,降伏現象はキャリアの衝突電離による電子なだれによるので降伏電圧は正の温度係数を有する。降伏電圧が5.5V程度より小さければ降伏現象はツェナー効果(半導体に強い電界が加わると,価電子帯にある電子がトンネル効果により伝導帯に移り,大きな電流が流れる現象。ジーナー効果ともいう)により,降伏電圧は負の温度係数を有する。そこで定電圧ダイオードの端子電圧の温度係数を0にするためには5.5V程度の降伏電圧を利用するか,降伏電圧が5.5Vより大きいダイオードに順方向にバイアスされるp-n接合ダイオードを組み合わせて使用する。とくに端子電圧の温度係数が0の定電圧ダイオードを基準電圧ダイオードといい,電圧標準に用いられる。
執筆者:菅野 卓雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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