日本大百科全書(ニッポニカ) 「宛行状」の意味・わかりやすい解説
宛行状(あておこないじょう)
あておこないじょう
荘園(しょうえん)制や武家支配の下では土地や所職(しょしき)を給付することを宛行といい、宛行に際して給付者が被給付者に交付する文書を宛行状という。「あてがいじょう」とも読み、充行状、充文(あてぶみ)とも書く。ことに武家社会での所領宛行は、所領安堵(あんど)とともに主君の御恩として主従関係形成の主要な契機をなすものであるため、宛行状は重要な文書として意識されていた。そのため鎌倉幕府はもっとも厳重な形式とされた下文(くだしぶみ)形式で宛行状を下付し、室町幕府も初期には足利尊氏(あしかがたかうじ)が下文形式の宛行状を出している。しかしその後、3代義満(よしみつ)からは将軍の御判御教書(ごはんのみぎょうしょ)の形式で宛行がなされるようになった。守護大名や戦国大名も家臣への所領宛行に際し、書下(かきくだし)、判物(はんもつ)、印判状(いんばんじょう)などの形式で宛行状を交付している。
[加藤 哲]
『相田二郎著『日本の古文書』(1949・岩波書店)』▽『佐藤進一著『古文書学入門』(1971・法政大学出版局)』