実存主義演劇(読み)じつぞんしゅぎえんげき(その他表記)théâtre existentialiste

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「実存主義演劇」の意味・わかりやすい解説

実存主義演劇
じつぞんしゅぎえんげき
théâtre existentialiste

実存主義哲学の理念に基づいた,あるいはその影響を受けた演劇。第2次世界大戦末期から戦後にかけて,フランスを中心として盛んになった。登場人物の性格や心理に劇的契機を求めず,神をも含め確固とした価値観が否定された絶望的な状況のなかで,自由意志によってみずからの価値観を選択する主体的な存在としての人間の姿を表現する。サルトル戯曲』 (1943) ,『出口なし』 (44) ,『汚れた手』 (48) ,『悪魔と神』 (51) やカミュの『カリギュラ』 (45) などが代表的なもので,広義にはアヌイやマルセルらの作品も含まれる。人間のおかれている状況認識という点では,1950年代に登場する不条理演劇ときわめて近いが,実存主義演劇ではそれが伝統的な劇構造のなかで表現されたのに対し,不条理演劇は劇構造そのものを崩そうとした。

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