家族性アミロイド・ポリニューロパシー(読み)かぞくせいあみろいどぽりにゅーろぱしー(その他表記)familial amyloidotic polyneuropathy

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

家族性アミロイド・ポリニューロパシー
かぞくせいあみろいどぽりにゅーろぱしー
familial amyloidotic polyneuropathy

アミロイドーシスの一種。末梢(まっしょう)神経や全身臓器に、線維構造をもつ特殊なタンパク質(アミロイド)が沈着し、末梢神経障害(ニューロパシー)をはじめとする全身性の臓器障害を起こす進行性の代謝性疾患である。略称FAP。家族性アミロイド・ポリニューロパチーともいう。常染色体顕性の遺伝性疾患で難治性のものが多い。トランスサイレチンtransthyretin(TTR)とよばれるアミロイド線維が組織などに沈着するために起こるとされるTTR-FAP(トランスサイレチン型家族性アミロイド・ポリニューロパシー)の患者がもっとも多い。ポルトガル、スウェーデン、日本などに集団での発症が報告されており、日本国内では熊本県や長野県に大集積地(家系)がある。難治性の下痢と便秘の繰り返し、吐き気や嘔吐(おうと)、尿失禁や排尿障害、勃起(ぼっき)不全、起立性低血圧、発汗障害などの自律神経症状と下肢末梢の痛みやしびれなどの症状を伴い、多くは20~30歳代で発症する。発症後はおもに感覚障害が左右対称に下肢末梢から現れ、徐々に上肢に進行し、とくに皮膚感覚である温覚痛覚の障害が初期に強く現れるが、触覚深部感覚である振動覚などは正常に保たれる解離性感覚障害を呈する。さらに筋力低下や筋萎縮などの運動神経障害が下肢から出現し、これもしだいに上行する。障害は心臓、腎(じん)臓、消化器、眼(め)にまでおよび、数年の経過を経て歩行障害を伴うようになり、心不全や尿毒症、感染症などによって死亡する例もある。治療はTTRがおもに肝臓で産生されるため、肝移植などが検討される。

 なお、集積地以外でも世界各地でFAP患者が確認されており、日本でも自律神経障害が軽微で遺伝的背景が不明な、比較的高齢の患者の孤発症例が各地で報告されている。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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