化学辞典 第2版 「密度勾配遠心法」の解説
密度勾配遠心法
ミツドコウバイエンシンホウ
density-gradient centrifugation
密度勾配遠心法には,大別するとショ糖密度勾配法と塩化セシウム密度勾配法の2種類がある.これらは,とくに生体高分子系の研究に多く用いられている.前者は,ショ糖密度勾配中を高分子が遠心力を受けて沈降する速度差によって,すなわち,沈降係数の違いによって成分を分離する方法である.一般に,生体高分子の密度はショ糖の密度より高いので,長時間遠心すれば高分子は全部沈降してしまうが,適当な時間遠心すれば各成分はいくつかの層をつくって分離される.これを遠心管の下部にピンホールをあけ,試料液を流出させるとそのまま各成分が分離される.また後者は,高濃度の塩化セシウムが遠心力場中で濃度分布に沈降平衡が成り立ち,液面から底に向かって濃度増加を示し,一定の密度勾配のなかで高分子がそれぞれの浮遊密度(buoyant density)と同じ密度の位置,すなわち,浮力と高分子に対する重力の釣り合った位置に分布する平衡状態になって分離する方法であり,等密度勾配遠心法ともよばれる.この方法では,密度がわずかに異なる(0.001程度)成分の分離検出が可能になる.密度の違いからDNAの分離には塩化セシウム溶液が用いられ,RNAの分離には硫酸セシウムまたは臭化セシウム溶液が用いられる.試料の分子量は釣り合った位置を中心とした濃度分布の広がりによって表され,分子量が小さいほうが拡散しやすいので分布が広がる.[別用語参照]沈降速度法,沈降平衡法
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報