沈降平衡(読み)チンコウヘイコウ

化学辞典 第2版 「沈降平衡」の解説

沈降平衡
チンコウヘイコウ
sedimentation equilibrium

分散系で分散相の粒子重力によって沈降すると,しだいに下のほうの濃度が高くなるとともに,その濃度勾配に比例して,重力と反対方向に向かって粒子の拡散が起こるようになる.この沈降と拡散とが釣り合った状態を沈降平衡という.このとき,高さ h1 および h2 における単位体積中の粒子数を,それぞれ n1 および n2 とすると,

となる.ここで,NAアボガドロ定数R気体定数Tは絶対温度,ρ1 および ρ2 はそれぞれ粒子および媒質密度gは重力の加速度である.J.B. Perrin(ペラン)(1909年)は,この現象を観察して,NA の値を求めて妥当な値を得たが,普通のコロイドでは,上の関係は液面から0.1~数 mm の範囲内で成立する.タンパク質など単分散高分子溶液については,超遠心機を用いて沈降平衡に達したとき,回転の角速度ω,高分子の部分比体積V,媒質の密度ρ,回転軸からの距離が x1 および x2 における濃度をそれぞれ c1 および c1 とすれば,

によって分子量を求めることができる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「沈降平衡」の意味・わかりやすい解説

沈降平衡
ちんこうへいこう
sedimentation equilibrium

核酸,蛋白質などの高分子溶液を超遠心力場に置くと粒子の沈降が起り,液内にその濃度差を生じる。低分子でも比重の大きな塩,たとえばセシウム塩などの濃厚溶液であると,同様の現象がみられる。長時間遠心力場に静置すると,無方向性の拡散速度と遠心力による沈降速度との均衡が保たれ,沈降平衡が成立する。沈降速度あるいは沈降平衡の条件から高分子の分子量を求めることができる。沈降速度は溶媒との比重差に関係するから,溶媒にあらかじめ密度差をつくっておくか,遠心力場で密度勾配ができるような条件を設定しておけば,高分子は特定の密度に対応して層状に相互分離できる。生体高分子,特に核酸成分の分離に応用される密度勾配超遠心法はこの原理による。

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栄養・生化学辞典 「沈降平衡」の解説

沈降平衡

 高分子溶液を遠心力場におくと溶質は遠心力の方向に移動するが,逆に溶媒によって押し上げられる力が働く.この二つの力が釣り合うと溶質は移動しない.この状態.

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