改訂新版 世界大百科事典 「少年兵」の意味・わかりやすい解説
少年兵 (しょうねんへい)
未成年の少年を兵員として動員するのは,第2次大戦中のナチスによるベルリン防衛少年隊などの例があるが,日本でも太平洋戦争中,各種の少年兵が大量に募集された。すでに海軍は海軍航空本部の設置をうけて,1930年海軍志願兵の兵種の一つとして,飛行予科練習制度(予科練)を採用し,高等小学校卒業程度の少年を3年間教育して少年飛行兵を育成することにした。この予科練制度は37年に拡大・整備され,太平洋戦争中には大規模に募集され,特攻攻撃に動員された。陸軍でも,海軍の飛行予科練習制度にならって1933年,少年飛行兵制度を導入し,これも太平洋戦争中,大規模な募集がなされた(1944年には5000人採用)。さらに陸軍では40年,ドイツに派遣された山下奉文中将らの軍事視察団報告とノモンハン事件の教訓から少年戦車兵学校が設置されることになり,41年陸軍戦車兵学校が富士山麓に開校された。このほかにも徴兵適齢前の各種の少年兵が陸海軍で下士官養成を目的に大量に募集されたが,戦局の悪化とともに前線に動員されて,特攻作戦などで17~18歳の若さで戦死した者が少なくない。少年兵制度は志願制であったが,戦時下,軍歌や雑誌,戦争映画が少年飛行兵や少年戦車兵を英雄視してとりあげ,学校教師のすすめもあって多くの少年が志願した。戦争末期には学校への事実上の人数割当てがあったともいわれる。
執筆者:粟屋 憲太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報