屎尿浄化槽(読み)しにょうじょうかそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「屎尿浄化槽」の意味・わかりやすい解説

屎尿浄化槽
しにょうじょうかそう

水洗便所から集めた屎尿を衛生的に処理する装置。下水道の普及が遅れていた日本では、便所の水洗化希望に対し、浄化槽を設置して対応してきた。これは日本で独自に発達した技術であり、1982年(昭和57)には全国に約412万基普及し、この方式による水洗化人口は2900万人に達した(その後、下水道の普及に伴い、浄化槽の普及人口は低下し、2007年度末では1121万人となっている)。初期の屎尿浄化槽は、技術が未発達で、汚濁物除去が不十分なために、水質汚濁の原因となることが指摘され、1981年には建設省(現国土交通省)が新しく屎尿浄化槽の構造基準改善を行い、また1983年には、浄化槽の設置、保守点検、清掃、製造の規制などについて定めた浄化槽法(昭和58年法律第43号)が制定された。なお、家庭から発生する台所・風呂(ふろ)排水などをあわせて処理する場合、合併浄化槽とよんでいる。

[松井三郎]

 2000年の浄化槽法改正で単独処理浄化槽新設が禁止となり、合併浄化槽への転換がはかられている。また、浄化槽の処理水については建築基準法水質汚濁防止法などで水質基準が規定されており、そのため浄化槽の性能も向上している。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の屎尿浄化槽の言及

【浄化槽】より

…汚水を集めて処理する施設のある公共下水道に直接連結できない地域で水洗便所を使用したいときは,水洗便所を設置する者が汚水を浄化する能力をもつ施設を設けなければならない。この施設を屎尿(しによう)浄化槽あるいは単に浄化槽という。すなわち,水洗便所より排泄(はいせつ)される屎尿は,下水道を経て終末処理場で衛生的に処理されるのが理想的であるが,下水道が未整備の地域において,浄化槽は補充的役割をもつ設備として発達してきた。…

※「屎尿浄化槽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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