建築に関する基本的な法律で、建物の構造や用途、敷地の基準を定めている。震度6強の地震でも倒壊しない強度を求めた現行の耐震基準も同法に基づいている。2006年の改正では、強度不足のホテルやマンションが相次いで建設、販売された耐震強度偽装事件を受け、安全性を確かめるための構造計算のチェック態勢を厳しくした。
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建築物の敷地、構造、設備、用途に関する最低の基準を定め、国民の生命、健康、財産の保護を図ることを目的とする法律。昭和25年法律第201号。市街地建築物法(1919)にかわるものとして制定され、数次の改正を経て現在に至っている。
おもな内容は次のとおり。
(1)一定の建築物や都市計画区域内および知事が指定する区域内の建物の建築、大規模の修繕・模様替えなどをするには、市町村などへ建築確認の申請をし、建築主事または国土交通大臣の指定を受けた指定確認検査機関の確認を受けないと工事に着工できない。建築物がこの法律の定める最低基準に適合することを確保するために、建築主事または指定確認検査機関による建築確認の制度が定められた。建築主事または指定確認検査機関が建築確認を行う場合には、防火上の観点から、その建築物の所在地を管轄する消防長または消防署長の同意を得なければならない(消防法7条)。
(2)建築基準法の定める建築物の最低基準は、その内容から、いわゆる「単体規定」と「集団規定」とに分類できる。単体規定は、個々の建築物の構造耐力上、防火・避難上、衛生上などの観点から安全性などを確保するための個々の建築物の敷地、構造、建築設備に関する一般的基準であって、全国的に適用される。集団規定は、市街地全体の生活環境や都市機能を望ましい水準に確保することを目的とした基準であって、都市計画区域内に建築される建築物についてのみ適用される。
(3)集団規定は、大別して、建築物・敷地と道路に関する基準(建築物の敷地は道路に2メートル以上接することを要し、道路は原則として幅員4メートル以上のものをいう)、建築物の用途および形態に関する基準(第1種・第2種低層住居専用地域、第1種・第2種中高層住居専用地域、近隣商業地域、商業地域、工業地域など12の用途地域区分ごとに、建築の許されない建物の種類を定め、また、建物の建坪(けんぺい)率、容積率、高さなどを制限する。特定行政庁が用途地域内で建築の例外許可を行う場合には、利害関係者の参加を求めて公開による聴聞を行い、建築審査会の同意を得なければならない)および防火地域・準防火地域の基準(この地域内での建築物は一定の耐火構造をもたねばならない)に区別できる。
(4)建築物の利用を増進し、土地の環境を改善するために、一定の区域を定め、土地の所有権者または建築物の所有を目的とした借地権者の全員の合意により、建物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠などに関して、法律の定める基準よりも高水準の基準を内容とする「建築協定」を締結することができる。
(5)行政庁は違反建築物や保安上危険な建物に対して、工事停止命令、除却命令、是正命令などを出すことのできる権限を有する。命令に違反する者については罰則が定められ、また行政庁は代執行をすることもできる。
(6)建築主事を置く市町村および都道府県に建築審査会が置かれ、特定行政庁または建築主事または指定確認検査機関の処分またはこれに係る不作為についての審査請求を処理する。
[宮田三郎]
『荒秀編『新建築基準法50講』(1998・有斐閣)』▽『佐藤守男著『入門 建築基準法ノート』(2001・井上書院)』▽『国土交通省住宅局編『建築基準法令集』各年版(日本建築学会・丸善)』
建築物の敷地,構造,設備,用途に関する最低の基準を定めて,国民の生命,健康および財産の保護を図り,公共の福祉の増進に資することを目的とした法律(昭和25年(1950)法律第201号)。同法は,第2次世界大戦後の社会状況の変化と建築の技術の進歩に伴い,それまでの市街地建築物法(大正8年(1919)法律第37号)に代わって制定された。後者は,保安,衛生,または都市計画上必要な建築物の制限をおもな内容としていたが,その具体的な制限内容をほとんど政令に委任していたので,これを改めて,建築の質的改善によって災害の防止と国民生活の向上を図るため,国民の権利義務に関する重要事項はすべて法律で具体的,かつ詳細に規定することにしたものである。同時に建築基準法の関連法として,建築関係技術者の資格を定める建築士法(昭和25年法律第202号)が制定され,先に公布された建設業法(昭和24年法律第100号)とともに建築に関する基本的な法体制が確立された。
建築基準法は建築自体を規制する法令であり,大別すると,(1)適用範囲,手続関係に関する規定,(2)建築物個々に関する単体規定,(3)建築物の集団としての整合性を求める集団規定,(4)そのほか建築協定,建築審査会などに関する規定などになる。手続に関しては,建築行政に関する専門的知識と経験を有する建築主事を置き,建築着工前に建築計画を建築主事に申請して確認を受ける。さらに,竣工後にも同主事の検査を受けて建築物の最低基準を保証することになる。建築物個々の規制としては,建築物の敷地の衛生・安全に関するもの,構造耐力にかかわるもの,防火・避難に関するもの,建築設備に関するものが具体的に規定されている。集団規定としては,用途地域および防火地域,美観地区その他の地域地区制に基づいた建築物の用途,形態,構造の制限があげられる。市街地の環境に関する最近の話題としては,マンションブームなど市街地の高度化に伴い,日照や通風の侵害問題などがあった。個々の建築の自由との兼合いがむずかしいと考えられていたが,日照確保の要望は強く,建築基準法による規定として北側斜線制限(1970改正),日影規制(1976改正。〈日照権〉の項目参照)などが加わった。なお,同法で定める建築物の敷地,構造および建築設備の最低基準に関しては,地方公共団体は条例で,安全上,防火上,または衛生上必要な制限を付加することができ,また市町村は知事の承認を得て条例で,一定区域について,制限の一部を緩和することができる。また,市町村条例の区域内で,土地建物の所有権者など関係住民全員の合意(申合せ)によって,建築物の敷地,位置,構造,用途,形態,意匠,建築設備に関する基準を協定することができる(建築協定)。この制度は当初からあったが,とくに1971年以後,民間ディベロッパーの分譲地において建築協定締結の動きが活発化し,また,市街地の環境問題の重要性から脚光を浴びるようになってきた。
執筆者:伊藤 滋+忠末 裕美
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(暮沢剛巳 建築評論家 / 2008年)
(平井允 まちづくりプランナー / 2007年)
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