水質基準(読み)すいしつきじゅん(英語表記)water quality standard

知恵蔵の解説

水質基準

飲み安全性を確保するために水道法基準を満たすことを義務付けた基準。2002年に10年ぶりに改定され、浄水過程でできる臭素酸ホルムアルデヒド、洗剤に使われる非イオン界面活性剤アルミニウムなど13項目が新たに入り、ゴルフ場で使われなくなった農薬シマジン、工場で洗浄剤に使われる1.1.1‐トリクロロエタンなど9項目を除外、46項目から50項目にし、濃度基準を設定した。おいしい水の維持のための「快適水質項目」と「監視項目」を廃止し、目標値を定め行政指導で対応する「水質管理目標設定項目」(27項目)、環境ホルモンなどの「要検討項目」(40項目)が導入された。河川などの環境基準に比べて水質基準は基準値を約10倍厳しく設定。

(杉本裕明 朝日新聞記者 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

すいしつ‐きじゅん【水質基準】

水質について、水の使用目的ごとに決められた基準。法律により、水道水排水・放流下水・遊泳用プールなどについて定められている。

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百科事典マイペディアの解説

水質基準【すいしつきじゅん】

水を利用する場合の適合性を判定するための基準。上水道,井戸水などの飲料水,水源用水,農業用水,工業用水などについて,それぞれ定められた基準に照らして,その適否が判定される。特に飲料水の検査では,病原体および毒性化学物質の検査に重点がおかれる。病原体については,その直接の検出が困難なため,屎尿(しにょう)による汚染を判定する目的で大腸菌群数,一般細菌数,アンモニア性窒素および亜硝酸性窒素などの検査を行い,化学物質についてはシアン,水銀,有機リン,鉛,ヒ素,フッ素,クロム,銅,カドミウムマンガン,亜鉛,さらにはヨウ素131やセシウム137などの放射性物質を検査し,それぞれ不検出または許容量以下でなければならない。飲料水については世界保健機関WHOが飲料水水質ガイドラインを発表し,加盟各国が実情に応じて国内の水質基準を制定するよう勧告している。また公共水域の水質保全のため,工場排水,下水処理水,事業所排水などに関して排水基準が定められている。

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世界大百科事典 第2版の解説

すいしつきじゅん【水質基準 water quality standard】

水を利用する際の適合性の判定となる基準。人が水を利用する形態によって水質基準の内容は違ってくるが,日本では,公共水域の水質は環境基本法により定められており,その内容は,人の健康保護に関する環境基準と生活環境の保全に関する環境基準の二通りの規制となっている。公共水域の水質保全があらゆる水利用の共通基盤となることから,このような二通りの規制がとられているのである。健康保護に関する基準では,カドミウム,鉛,6価クロム,ヒ素,総水銀,シアン,アルキル水銀,PCBなど23項目の物質とその基準値が指定されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

水質基準
すいしつきじゅん

水を利用する際に、その水の適合性を判定する基準。一般には水道法に基づく水道水の水質基準のことをいうが、水質汚濁防止法に基づく排水の水質基準や、下水道法による政令で定められた放流下水の水質基準、あるいは遊泳用プールの水質基準をさすこともある。さらに公害対策基本法に基づく水の環境基準の意味に用いられることもある。[重田定義]

水道水の水質基準

水道水としての第一条件は病原体を含まないことであるが、多量の水から病原体を検出することは技術的には困難である。しかし、水が屎尿(しにょう)によって汚染されていることが証明できれば病原体の混入が予想されるため、屎尿による汚染の証明法として大腸菌群の有無の検査が重視される。また、水が屎尿で汚染されると、化学的には尿素やアミノ酸などがアンモニウム塩を遊離し、これが細菌によって硝酸性窒素、亜硝酸性窒素へと酸化される。したがって、両物質が一定量以上の場合には屎尿による汚染を疑って飲用不適となる。なお、塩素イオンが多いときにも、いちおう屎尿汚染の疑いが出るが、細菌数や窒素化合物などに異常がなければ、地質や海水の影響、あるいは過去の汚染と考えられ、現在は浄化されているとされる。このほか、過マンガン酸カリウム消費量は、通常、水中の有機物の含有量を表すことから、有機物が多いということは、ほとんどの場合汚染されていると考えられる。水道水の第二条件は、障害をおこす物質の規制である。水質基準では、ある量を超えると障害をおこす物質の許容量を示している。これには水銀、シアン、六価クロム、ヒ素、鉛、フッ素、カドミウムなどのように障害をおこさない限度を示したものと、鉄、マンガン、フェノール類などのように着色、汚れ、臭みなどの害に関連して定められた限界値とが含まれる。そのほか、水道水においては外観、味などの条件も加味されている。
 さらに、人口の都市集中化、産業の進展、産業技術の進歩などは、河川、湖沼など水道水源の汚染、水質汚濁の多様化、複雑化をもたらし、異臭、異味などの被害が増加しており、また水道原水中の有機物質が、浄水処理において用いられる塩素と結合して、発癌(はつがん)性のおそれのあるトリハロメタンが生成されるといった問題が生じた。そのため厚生省(現厚生労働省)では1992年(平成4)12月に水道の水質基準を約30年ぶりに大幅に見直し、法律として遵守すべき項目は従来の26項目から46項目に拡充強化するとともに、おいしい水を供給することを目標とした「快適水質項目」13項目、将来に向けて新たな化学物質に対応し安全性向上を目標とした「監視項目」26項目を定め、1993年12月から施行した。また、旧基準から10年を経過し、新たな水道水質にかかわる問題が提起されたことをうけて、2003年に水質基準が一部改正された。新しく追加された項目は、大腸菌、ホウ素、1,4-ジオキシサン、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、臭素、トリクロロ酢酸、ホルムアルデヒド、アルミニウム、ジエオスミン、2-メチルイソボルネオール、非イオン界面活性剤、全有機炭素の13項目、除外した項目は、大腸菌群、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,3-ジクロロプロペン、シマジン、チウラム、チオベンカルブ、1,1,1-トリクロロエタン、有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)の9項目である。[重田定義]

排水の水質基準

水質汚濁防止法に基づいて、公共用水域の環境基準を守るために必要とされる排水基準で、カドミウム、水銀など人の健康にかかわる被害を生じさせるおそれのある物質と、水素イオン濃度(pH)、化学的酸素要求量(COD)などのように生活環境にかかわる被害を生じさせるおそれのある指標についての基準値が設定されている。なお、健康にかかわる有害物質についての排水基準は、1993年3月に拡充強化された「人の健康の保護に関する環境基準」を踏まえ、ジクロロメタン等の有機塩素系化合物、シマジン等の農薬など合計13項目について新たに排水基準を設定し、また鉛およびヒ素について基準値の強化を行い、1994年2月から排水規制を実施している。また、この排水基準は全国一律であるが、統一的な排水基準によって環境基準を達成することが困難な水域においては、都道府県が条例により厳しい上乗せ排水基準を設定できることになっている。[重田定義]

放流下水の水質基準

下水道法による政令で定められた放流下水の水質基準であるが、公害関係の法律によって別に地域ごとに定められた水質基準がある場合はそれに従うこととなる。[重田定義]

遊泳用プールの水質基準

厚生労働省では、いわゆるプール病とよばれるアデノウイルス感染症をはじめ、皮膚疾患、眼・耳・鼻・咽喉(いんこう)などの疾患が遊泳用プールの微生物汚染によって発生することを予防するために、次のような水質基準を定めている。
(1)水素イオン濃度はpH5.8~8.6でなければならない。
(2)濁度は3度を超えてはならない。
(3)過マンガン酸カリウム消費量は12ppmを超えてはならない。
(4)残留塩素は遊離残留塩素において0.4ppmまたは総残留塩素において1.0ppm以上でなければならない。
(5)大腸菌群は100ミリリットル中の最確数が5を超えないこと。[重田定義]

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世界大百科事典内の水質基準の言及

【飲料水】より

…飲料水源が人の排泄物などで汚染されると伝染病の原因となることは,細菌学発達(19世紀末)以前に医学的知識として十分に理解されており,そのため古来より汚染を受けていない上質の飲料水源を選択することがきわめて重要であった。
[飲料水の判定基準]
 日本では水道(上水道)については,〈水道法〉に基づく水質基準に関する省令によって適否が判定されるが,井戸水など一般の飲料水についても,これを準用した形で飲料水の判定基準が設けられている。飲料水の適否判定を行うに当たってもっとも重要なことは,水源の種類とその汚染の程度を含めた環境調査をすることであり,そのうえで種々の試験によって判定する。…

【上水道】より


[水質管理と浄水場]
 どこの国でも上水道は直接飲用可能な水を配ることを目的としている。その具体的水質要件として各国では水質基準が定められ,水道水の水質レベルが向上してきた。しかし汚染が広がり,分析技術が進歩した今日,環境水中から多種類の人工合成化学物質が微量ながら検出されるようになり,安全な水とは何かの規定は流動的になってきている。…

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