糞尿(ふんにょう)(大便と尿)のことであるが、ここでは衛生学の立場で述べる。屎尿の排泄(はいせつ)量は1人1日1~1.5リットルであり、汲取(くみと)り屎尿の成分は、約97%の水分と約3%の固形成分からなり、固形分の約60%は有機成分である。また、屎尿には大量の微生物が含まれているため、屎尿の非衛生的な処理や不法投棄が、消化器系感染症や寄生虫病の原因、あるいは河川、地下水の汚染の原因となる。
日本の屎尿処理は長い間農村還元による「農肥利用」を前提として成立していた。すなわち、第二次世界大戦直後までの屎尿は、日本の農業に必要な肥料として用いられ、都市において排出された屎尿も、そのほとんどが農村で利用されていたわけである。こうした事情から、日本においては、長いこと消化器系感染症や寄生虫病が高い罹患(りかん)率を示さなければならなかった。当時の屎尿処理問題は、農肥としての屎尿の安全化をいかに達成するかにかかっていたといえる。しかし、戦後の空白状態を脱却して、日本が急速に復興し始める昭和30年代になると、屎尿問題は従来とまったく異なる展開を示すこととなる。すなわち、都市への急激な人口の集中、都市の膨張、さらにはそれに伴う周辺農村の消滅のほか、化学肥料の普及などによって、増加する都市排出屎尿の農村還元は停滞をきたした。こうしたことから、屎尿処理問題は都市衛生の重大な課題として急速にクローズアップされてきた。
日本の下水道処理人口普及率は、2005年度末で69.3%である。人口100万人以上の大都市では同普及率が98.7%に達しているのに比べ、人口5万人未満の中小市町村における同普及率は39.3%と、地域格差が著しい。下水道事業は都道府県が計画推進の主体となっており、過疎化が進む地方での屎尿処理にはなお課題が残っている。
[重田定義]
『財団法人厚生統計協会編・刊『国民衛生の動向』各年版』
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…一方,物理化学的な処理方法も行われており,これには活性汚泥法による処理過程で鉄やアルミニウムの凝集剤を注入して最終沈殿池でリンを沈殿除去する方法,また2次処理水中のリンを付着結晶化させて除去する晶析脱リン法などがある。
[下水道未整備地域での処理問題]
下水道が普及していない地域では,家庭雑排水は家屋近くの排水路にたれ流しになっており,屎尿(しによう)はバキューム車による回収が行われている。日本人が1人1日排出する平均汚濁量は,雑排水の場合BOD5量約40g,COD量約20g,浮遊物質量約36g,全窒素量約3g,全リン量約1gであり,一方,屎尿のほうはBOD5量約13g,COD量約6.5g,浮遊物質量約10g,全窒素量約10g,全リン量約0.6gである。…
…人間が排泄(はいせつ)する大便と小便を屎尿または糞尿と呼んでおり,これを処理することを屎尿処理という。もともとは人間の住む近くの環境に排泄し,自然の浄化力にまかせていたのであるが,人口密度が大きくなると環境衛生上そのようなことができなくなり,屎尿を収集するようになる。…
※「屎尿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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