日本大百科全書(ニッポニカ) 「川瀬巴水」の意味・わかりやすい解説
川瀬巴水
かわせはすい
(1883―1957)
版画家。東京に生まれる。本名文治郎。初め川端玉章(ぎょくしょう)門下の青柳墨川に、ついで荒木寛友に、さらに白馬会洋画研究所に入ったのち、鏑木清方(かぶらききよかた)に師事した。巴水という号は清方の命名による。1918年(大正7)渡辺木版画店より版画の処女作を出して以来、日本各地を写生し、大正・昭和を通じて風景版画を制作した。この時代はまた創作版画運動の興隆期でもあったが、巴水は、伝統的な浮世絵版画の叙情的世界に、自然に肉薄する近代人の視点を導入することにより、独自の世界を展開した。
[玉蟲玲子]
『楢崎宗重解説『川瀬巴水木版画集』(1979・毎日新聞社)』