市野井村(読み)いちのいむら

日本歴史地名大系 「市野井村」の解説

市野井村
いちのいむら

[現在地名]新田町市野井

大間々おおまま扇状地藪塚やぶづか面の扇端部から、その南方沖積低地を占め、東は村田むらた村、北はいち村、西は金井かない村。北部を足利街道が東西に通過する。当村付近を「和名抄」新田郡駅家うまや郷に比定する説がある。元久二年(一二〇五)八月日の源実朝下文写(正木文書)に、新田義兼が継目安堵された一二ヵ郷地頭職のうちに「一井郷」とある。嘉応二年(一一七〇)の新田庄田畠在家目録写(同文書)に「一井の郷 田二十町八反十たい 畠二町 在家十一う」とある。その後の伝領関係は不明であるが、室町時代新田岩松氏の下で、室町幕府奉公衆で「京都祗候」の大館教氏が「大館郷四ケ村・一井郷四ケ村」を知行しており、庶子方所領として位置付けられた(年月日未詳「新田庄内岩松方庶子方寺領等注文」正木文書など)。新田庄域には、大間々扇状地上の標高六〇メートル線を中心に六〇余の湧水が分布しているが、そのうち一七が現市野井の中に集中している。元亨二年(一三二二)には一井いちのい郷の大館宗氏と田島たじま(現太田市)の新田下野太郎入道(岩松政経)との間に相論があった。同年一〇月二七日の関東下知状写(同文書)によれば、田島郷用水往古から「一井郷沼水」を引いていたが、宗氏が用水堀をふさいだため水が来なくなったと田島郷側が訴え、幕府から認められている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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