笠懸野(読み)かさがけの

精選版 日本国語大辞典 「笠懸野」の意味・読み・例文・類語

かさがけ‐の【笠懸野】

(「かさかけの」とも) 群馬県新田郡の北方の荒れ野。今の笠懸町、太田市北部付近という。鎌倉時代源頼朝が笠懸の儀式を行なったところからこの名が生じたとする。地下水位の低い荒地だったが、江戸初期から開発され、現在は野菜栽培地。
太平記(14C後)一〇「生品明神の御前にて旗を挙げ、綸旨を披(ひら)いて三度是を拝し、笠懸野(カサカケノ)へ打出らる」

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日本歴史地名大系 「笠懸野」の解説

笠懸野
かさかけの

大間々おおまま扇状地の扇央部、笠懸村久宮くぐうから藪塚本やぶづかほん町にかけての地域呼称。現新田郡域の北半分を占める。中世には新田庄に属し、地下水位が低く開墾が困難なため原野となっていた。元弘三年(一三三三)五月に生品いくしな神社で兵を挙げた新田義貞軍が、まず笠懸野に打出たと諸書にある(「太平記」巻一〇新田義貞謀叛事付天狗催越後勢事など)。ここにはあずま道といわれる東山道が通っており、この道を義貞軍は西進して上野中央部に至り、鎌倉街道を使って鎌倉を攻撃したと推定される。箱根・竹下の合戦で新田義貞軍が足利尊氏・直義勢に敗れて西走した翌月の建武三年(一三三六)一月九日、「笠懸原」でも戦闘が行われて新田城は攻め落された(同年一二月日「佐野安房一王丸軍忠状写」落合文書)。この戦いに足利方として参加した下野国人の佐野義綱は、新田軍の「(額)戸殿家人左衛門三郎」を討って自らの馬も傷をうけたと軍忠を申請した。額戸氏は新田氏庶家の一流で、笠懸野に程近い長岡ながおか強戸ごうど鶴生田つるうだ(現太田市)など新田庄北部を拠点としていたため、この戦いでも最前線にあたったと思われる。

観応二年(一三五一)冬、当時の上野守護は足利直義党の上杉憲顕で、守護代の長尾忠房以下は三〇〇余騎で世良田せらだ(現尾島町)に駐屯していた。足利尊氏東下を知った上野の反上杉勢力の大胡・山上一族ら五〇〇余騎は、尊氏党の新田大島義政を大将にしたてて、宇都宮氏に無断で世良田を攻めた(「太平記」巻三〇薩多山合戦事)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「笠懸野」の意味・わかりやすい解説

笠懸野
かさかけの

群馬県東部、渡良瀬(わたらせ)川の旧流路がつくった大間々扇状地(おおまませんじょうち)の古称。地名の由来は、中世武士の騎射「笠懸」によるとの伝説があり、1333年(元弘3・正慶2)新田義貞(にったよしさだ)挙兵のとき笠懸野の原野を経て鎌倉に進んだという。標高60~170メートル内外の緩傾斜地で、礫(れき)層が厚く地下水位が低くて水に不便なため、荒蕪(こうぶ)地であった。1669年(寛文9)代官岡上景能(おかのぼりかげよし)が扇頂の蕪町(かぶちょう)(現、桐生(きりゅう)市)から渡良瀬川の水を引いて岡登堰(おかのぼりぜき)をつくってから開発された。第二次世界大戦後、残存していた平地林畑地化して、いまは野菜の農耕地であるが、宅地も増加している。

[村木定雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「笠懸野」の意味・わかりやすい解説

笠懸野
かさかけの

群馬県東部,渡良瀬川の旧流路が形成した大間々扇状地面で,みどり市南部と太田市北西部を占める地域。寛文9 (1669) 年岡登用水の完成で,扇状地の東部と西部が開拓されたが,銅街道が通る中央部一帯は平地林が広く残されていた。 1975年大間々用水が完成して中央部の畑地化が進み,野菜のハウス栽培なども普及した。北部ではトマトとナス,南部ではたくあん用ダイコンとスイカを特産。

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世界大百科事典(旧版)内の笠懸野の言及

【藪塚本町[町]】より

…北東は八王子丘陵が連なって桐生市に接し,東武桐生線が通じる。扇状地は笠懸野(かさかけの)と呼ばれ,江戸時代初期に岡登(おかのぼり)用水が開削されて水田となった。中心集落の大原(おおばら)はこのときの新田集落で,足尾鉱山の銅を江戸へ運ぶ銅(あかがね)街道の宿場町でもあった。…

※「笠懸野」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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