日本大百科全書(ニッポニカ) 「平家公達草紙」の意味・わかりやすい解説
平家公達草紙
へいけきんだちそうし
説話絵巻。作者不明だが、一部は藤原隆房(たかふさ)の手になるか。13世紀初めの成立か。平家の公達(きんだち)である維盛(これもり)、資盛(すけもり)、重衡(しげひら)などの逸話を集めたもの。内容を異にする3種の本が知られているが、いずれも残欠である。また最初から白描(はくびょう)の絵巻としてつくられたものらしい。平家滅亡のはかなさを知っている作者が、死を予感していたかのように、華やかな宮廷行事や女性たちとの交流に生きていた若者たちをしのんでいる。『平家物語』とは逆の面から時代に照明をあてた作品として注目される。
[桑原博史]
『久保田淳校注『建礼門院右京大夫集 付平家公達草紙』(岩波文庫)』