犯罪構成要件にあたる事実が客観的には存在しないのに、これにあたる事実があるものと誤信して行為を行うこと。幻覚犯は、そもそも当該行為を処罰する規定が存在しない以上、行為者がいかに犯罪を犯すつもりでも不可罰であることはいうまでもない。これに対して、客観的には、当該行為は構成要件に該当するにもかかわらず、行為者がこれに該当しないものと誤信していたとしても、単なる「あてはめの錯誤」にすぎず、故意は阻却されない。なお、幻覚犯は迷信犯とは異なる。迷信犯とは、たとえば殺人の目的でいわゆる「丑(うし)の時参り」をする場合のように、だれがみてもこの種の行為によっては犯罪結果を実現しえないことをいう。
[名和鐵郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報