引伸し
ひきのばし
写真用語。ネガサイズのままでは観賞用として小さすぎるとき、拡大してネガより大きいサイズの印画をつくること。ネガから一定の大きさの印画をつくることを拡大焼付けというが、一般にはこれも引伸しといわれている。引伸しでは印画の大きさは自由に選ぶことができ、画面中の必要な部分のみを焼き付ける(トリミングという)こともできる。
[伊藤詩唱]
引伸し機とそれに付属するレンズなどに欠陥があると、鮮明な引伸しはできない。引伸し機は光学系を利用した拡大投影機で、(1)コンデンサー(集光)レンズを内蔵する集光型、あるいは集散光型、(2)拡散ボックスを使用する散光型の2種に大別され、光学系が縦に並べられた縦型が主であるが、まれに横型もある。大半は(1)のタイプに属するが、カラー用はほとんど(2)のタイプである。
レンズは引伸し専用のものが用意されているが、ネガの対角線長より長い焦点距離のものが多用されている。
使用法の基本は、引伸し機のネガキャリアーに原板を挟み、希望の大きさになるよう引伸し機本体の位置を変え、焦点をあわせ、印画紙の膜面を光源に向けて投影部に置き、露光をかける。実際にはどのくらい露光するのがよいかがわからないので、テストを繰り返すか、引伸し露光計を使用して適正露光をみつける。
[伊藤詩唱]
カラー用には、ネガカラー用、ポジカラー用の2種があるので、原板にあわせた印画紙を用意しなければならない。
モノクロ用には何種類かの号数のものがあるので、ネガの調子にあわせて号数を選択する。
[伊藤詩唱]
露光済みの印画紙は、安全光の下で、モノクロの場合には、現像→停止→定着→水洗→銀保護といった順に処理し、乾燥する。薬品は市販の既製薬を使用するのが能率的である。また現像処理も、印画紙の装填(そうてん)のみを暗室で行えばあとは明室処理ができる、小型自動(手動のものもある)現像機によるのが便利である。
[伊藤詩唱]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
引伸し【ひきのばし】
写真ネガあるいはポジの画像をレンズ系を通して拡大し,他の感光材料にプリントすること。幻灯機と同じ原理の引伸し機を使用する。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の引伸しの言及
【焼付け】より
…このような密着焼付けによって得たポジ像はネガ像と同じ寸法に仕上げられる。小型カメラで撮影して得るネガ像は一般に引伸機によって印画紙上に画像を拡大(これを引伸しenlargementという)して焼き付け,現像処理によって所望の大きさのポジ像を作る。ネガ像からポジ像を作る考え方は黒白写真,カラー写真とも同じで,またスチール写真と映画に共通のものである。…
※「引伸し」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」