精選版 日本国語大辞典 「引込」の意味・読み・例文・類語
ひっ‐こみ【引込】
- 〘 名詞 〙
- ① 引いて中へ入れること。ひっぱりこむこと。引き込み。
- ② 内にこもって外に出ないこと。また、武士の病気欠勤。
- ③ その場や世間から退くこと。また、物事から身をひくこと。事をすませて関係のない身となること。引退すること。また、その人。
- [初出の実例]「入道〈略〉牢人の引込(ヒッコミ)はいふに及ばず」(出典:俳諧・類船集(1676)仁)
- 「調子をはぐらかされて、引っ込みも進みもならなくなるに違いない」(出典:プールサイド小景(1954)〈庄野潤三〉)
- ④ 舞台から役者が退場すること。特に、能や歌舞伎で、役者が退場する際の芸。
- [初出の実例]「何かこはいろまがひの引っこみといふ事をいいながら出て行」(出典:洒落本・遊僊窟烟之花(1802か)一)
- ⑤ 損失。食い込み。
- ⑥ 刀の鞘の上覆い。〔日葡辞書(1603‐04)〕
ひき‐こみ【引込】
- 〘 名詞 〙
- ① 引っぱって中に入れること。
- [初出の実例]「二十戸くらいしか電灯をつけていない。引き込みに現金がいるからである」(出典:しろうと農村見学(1954)〈桑原武夫〉)
- ② ひそかに金銭などを引き出して使うこと。使いこむこと。
- [初出の実例]「此時京の手代六人、申合せて拾両廿両、乃至二貫匁三貫匁はづして、皆藤内が引込(ヒキコミ)にいひたて」(出典:浮世草子・風流曲三味線(1706)二)
- ③ 退(ひ)くこと。隠退すること。また、その人。隠居。
- [初出の実例]「城兵衛と申す町人の手代の引籠(ヒキコミ)」(出典:浮世草子・風流曲三味線(1706)二)
- ④ 麹(こうじ)の製造で、蒸米を麹室に運び入れること。