電気エネルギーを光エネルギーに変換する人工光源の総称。人類による火の起源は約170万年前の焚火(たきび)であり,その後,篝火(かがりび),脂燭(しそく),松明(たいまつ)から,油灯(前3000年),蠟燭(ろうそく),石油ランプ,ガス灯に至るまで,いずれも燃焼光源であった。電灯の歴史はわずか180年弱にすぎないが,その発達は目覚ましいものがある。
電気利用の最初のあかりは,1808年,イギリスのH.デービーによる実用炭素アーク灯の発明であり,日本では78年3月25日に,工部大学校でフランス製デュボスクアーク灯の初点火があり,後年,この日を〈電気記念日〉に制定している。アーク灯は探照灯や映写,写真製版などに用いられたほかは,一般照明用として普及しなかった。
電気利用の第2のあかりは,79年10月21日,アメリカのT.A.エジソンによる木綿糸を炭化した実用炭素電球の発明であるが,効率は約1ルーメン毎ワット,寿命は13時間半にすぎなかった。日本では89年8月12日,藤岡市助が東京電灯株式会社の電球試験室で,マダケを炭化した国産炭素電球12個を製作したのが最初である。短寿命の克服は1908年,アメリカのW.クーリッジによる引線タングステン電球の発明があり,09年,アメリカのI.ラングミュアによる窒素ガス入り電球の発明でタングステンの蒸発が抑えられ,21年の三浦順一による二重コイル電球の発明は効率を2割近く高めることができ,さらに25年不破橘三およびアメリカのピプキンMarvin Pipkinがそれぞれ別個に内面つや消し電球を発明して,グレアの防止に役だった。49年,ピプキンはシリカ塗装電球を発明して,さらに拡散光が得られ,二重コイルとともに広く世界の家庭に普及するに至っている。またヨウ素封入のハロゲン電球がアメリカで60年に発明され,ハロゲンサイクルによる小型,高効率,長寿命の特徴を備えることとなり,臭素封入の小型ハロゲン電球(片口金形)も出現して,点光源化が図られた。
電気利用の第3のあかりは,1938年,アメリカのインマンG.E.Inmanによる蛍光ランプの発明である。日本では40年8月27日,法隆寺金堂壁画の模写に20W昼光色蛍光灯127灯を使用したのが実用化の第一歩であった。蛍光灯は高効率,光色の優秀性,低輝度拡散光,冷光性,長寿命の特徴をもっていることから,電球照明にかわっておおいに普及を見て,日本での蛍光灯化率はオフィスビルで約90%,住宅で約30%という世界有数の蛍光灯普及国となっている。光色も昼光色,昼白色,白色,電球色と出そろい,明るくさわやかで色の見え方もよい3波長域発光形まで開発されている。
電気利用の第4のあかりはHIDランプ(高輝度放電ランプ)であり,その端緒は1933年,オランダで発表された高圧水銀ランプで,日本ではその翌年(1934)から製造しているが,青緑光のため,公園や道路照明に用いられた。色補正を施した蛍光高圧水銀ランプは50年にアメリカで発表され,いまや道路や高天井の工場や体育館などに賞用されている。ナトリウム,タリウム,インジウムのハロゲン化合物を入れたメタルハライドランプは61年にアメリカで発明され,日本での製造は69年,その後,スカンジウム,ナトリウム系のメタルハライドランプが出現して,蛍光水銀灯の約1.7倍の効率となっている。高圧ナトリウムランプは1963年,アメリカで製造を開始し,日本では69年からであるが,メタルハライドランプと同様,水銀灯安定器適合型の高圧ナトリウムランプが出現した結果,蛍光水銀灯の約2.4倍の効率となり,省電力照明に寄与している。
執筆者:伊東 孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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