六訂版 家庭医学大全科 「弛緩出血」の解説
弛緩出血
しかんしゅっけつ
Atonic bleeding
(女性の病気と妊娠・出産)
どんな病気か
分娩終了後に子宮筋の収縮が不良で、胎盤
原因は何か
分娩時の微弱陣痛の原因とほぼ同じで、以下の要因があげられます。
②微弱陣痛に対する長時間のオキシトシンやプロスタグランジンなどの子宮収縮薬の投与
③
④急速な分娩
⑤子宮奇形
⑥子宮筋腫(きんしゅ)の合併
⑧子宮筋を弛緩させる薬剤の投与
⑨
⑩子宮内の
症状の現れ方
胎盤の娩出後に持続的あるいは間欠的に大量の出血がみられます。出血は突如として起こることもありますが、徐々に始まることもあります。血液は静脈血成分を含むため暗赤色です。触診では子宮は極めて軟らかく、子宮底の確認が困難なこともあります。子宮腔内に血液がたまると子宮底は徐々に上昇し、出血量が多くなるとショック症状も現れます。
検査と診断
診断は症状と診察所見のみで可能なため特殊な検査は必要としませんが、出血量が多い場合には、貧血の程度と播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群(DIC)の合併の有無をみるため、血球数算定のほかに血液凝固系の検査をします。診断は症状の項で述べたとおりです。
治療の方法
①
②子宮収縮薬の静脈注射(静注)または筋肉注射(筋注):子宮収縮薬としてはバッカク製剤(主にマレイン酸メチルエルゴメトリン)がよく用いられます。その他オキシトシンの筋注または静注、プロスタグランジンF2α(PGF2α)の静注または子宮筋への筋注があります。
③導尿、子宮底の輪状
④全身管理も重要で輸液をすみやかに行います。出血多量の場合には輸血も行われます。子宮内操作を行うため感染防止の目的で抗生剤も投与されます。
⑤DICが発症した場合には、その治療も開始します。
⑥治療方法の①~⑤を用いても止血が不可能な場合は、子宮全摘除術または腟上部切断術が行われます。
病気に気づいたらどうする
専門医による双手圧迫や薬物療法などの処置を受けることが必要です。
菊池 昭彦
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報