日本大百科全書(ニッポニカ) 「強靭鋳鉄」の意味・わかりやすい解説
強靭鋳鉄
きょうじんちゅうてつ
強さ、延性の大きい鋳鉄。普通の鋳鉄鋳物は薄片状の黒鉛結晶を含むので、破面がねずみ色を呈する。そのため、ねずみ鋳鉄とよび、日本産業規格(JIS(ジス))でもこの呼び名を用い、ねずみ鋳鉄品1種から6種までを規格し、材料記号としてFC100、FC150、FC200、FC250、FC300、FC350を用い、それぞれ引張強さが1平方ミリメートル当り100ニュートン以上、150ニュートン以上などとなっている。このうちFC300以上の引張強さの高いねずみ鋳鉄を総称して強靭鋳鉄とよぶ。伸びも1%程度、抗折試験におけるたわみもかなりあり靭性が認められるので、この名称が用いられる。
強靭鋳鉄をつくるためには、溶解地金中の銑鉄(せんてつ)に対する鋼くずの配合量を多くし、低炭素、低ケイ素組成として黒鉛の量を減らし、また黒鉛以外の基地の部分をパーライトとよばれる強靭な組織とする。このためには、溶解温度を高くして結晶粒度を小さくするとともに、黒鉛結晶の核を与えるための接種処理を行うなどして、黒鉛組織、基地組織の両者を十分調整する必要がある。自動車のエンジンブロック、シリンダーライナー、ピストンなど内燃機関部品に広く用いられ、また工作機械のベッドにも用いられる。高級鋳鉄、パーライト鋳鉄、セミスチールなどもほぼ同様の意味であり、また、菊目組織鋳鉄とかミーハナイト鋳鉄などもこれに属する。
[井川克也]