パーライト(その他表記)pearlite

翻訳|pearlite

デジタル大辞泉 「パーライト」の意味・読み・例文・類語

パーライト(pearlite)

炭素鋼組織の一。フェライトセメンタイトとの共析晶きょうせきしょうで、交互に重なった層状をなし、真珠のような光沢がある。
真珠石。
真珠石・黒曜石などを粉砕して焼成したもの。軽量で断熱性・吸音性に富み、建築骨材に使用。
真珠石を砕いて高温で焼成したもの。白色多孔質で、園芸の土壌改良材や栽培用土に使用。保水通気性がよいが、軽いので流出しやすい。

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精選版 日本国語大辞典 「パーライト」の意味・読み・例文・類語

パーライト

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] perlite )
  2. 真珠質。
  3. 炭素鋼の組織の一つ。フェライトとセメンタイトが層状に交互に存在するもの。
  4. 防火・耐熱に用いる建材の一つ。黒曜石、真珠石の破砕片で、壁間に入れたり、耐火モルタルの骨材に用いたりする。

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改訂新版 世界大百科事典 「パーライト」の意味・わかりやすい解説

パーライト
pearlite

炭素鋼や合金鋼オーステナイト状態からゆっくり冷却するとき,650~600℃で変態を起こして生ずるフェライトセメンタイトが交互に層をなす組織。この変態をA1変態という。この組織は斜光線を用いて顕微鏡観察すると真珠(パール)のような光沢を示すところからパーライトと呼ばれる。冷却速度が速くなると生成温度が下がり,パーライトの層間隔は狭くなって硬さを増す。炭素量がおよそ0.8重量%の鋼(共析鋼と呼ばれる)はオーステナイトから直接パーライトが生じるが,炭素量がそれより少ない鋼(亜共析鋼)ではまずフェライト(初析フェライト)が生じ,その後オーステナイトからパーライトが生じる。炭素量が0.8%より多い鋼(過共析鋼)ではセメンタイト(初析セメンタイト)が生じたのちパーライトが生じる。また,鋼を焼きならした場合にもフェライトあるいはセメンタイトとともにパーライトが得られる。層状のパーライトは靱性(じんせい)に乏しいものであるが,A1変態点直下の温度に加熱すると,パーライト中のセメンタイトが球状化して球状パーライトとなり,靱性が得られる。鉄道のレール用鋼材の組織はおもにこのパーライトから成る。
はがね
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パーライト
perlite

(1)流紋岩質のガラス質火山岩で,多数の同心球状の割れ目が発達する。真珠岩ともいう。化学成分として,SiO2,Al2O3,K2Oに富む岩石であるが,さらに2~5%のH2Oを含有することも特徴である。色は灰白であり半透明ガラス状光沢を示し,貝殻状の破面を表す。秋田県,福島県,長野県などに産地が知られている。

(2)前記(1)の一部の産地のものは,その粉砕物を焼成すると含有されていた水分を放出して軽石状に膨張した焼成物が得られる。この焼成物は〈パーライト〉の商品名で市販されている。焼成品は比重がきわめて小さいこと,多孔質であるため,不燃性,軽量性,断熱性をもつ建築材として,また多孔質のための保水性,可溶性無機成分の含有などから土壌混合物として利用される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パーライト」の意味・わかりやすい解説

パーライト
ぱーらいと
pearlite

(1)α(アルファ)鉄の結晶(フェライト)と炭化鉄Fe3Cの結晶(セメンタイト)とが交互に重なり合った層状組織をパーライト組織という。この組織の断面を平滑に磨き、硝酸などでエッチングすると、フェライトだけが腐食され、セメンタイトは腐食されないので、顕微鏡で拡大すると、層状の模様が観察される。また肉眼では、真珠(パール)のように輝いて見えるのでパーライトとよばれている。

 パーライトはγ(ガンマ)鉄に炭素の溶け込んだ固溶体(オーステナイト)の共析分解によって形成される。すなわち、鉄と炭素との合金を約900℃に加熱すると、鉄は面心立方晶のγ鉄となり、炭素原子は鉄原子の間隙(かんげき)に溶け込む。これを冷却すると、鉄の結晶構造が体心立方晶に変化してα鉄の結晶(フェライト)になる。この結晶には炭素原子はほとんど溶け込めないので、炭化鉄の結晶(セメンタイト)が同時に発生し、その結果、フェライトとセメンタイトが交互に重なり合ったパーライトが形成される。オーステナイト状態からの冷却を速くすると、パーライトの層状組織が細かくなる。とくに細かなパーライトは、トルースタイトとよばれている。

(2)建築材料にパーライトpearliteとよばれるものがある。これは真珠岩(火山岩の一種)を素材とした多孔質の焼成品で、密度が小さくて、断熱性が優れているために、床材や壁材に使用される。パーライト・コンクリートはセメントにパーライトを混合して、軽量化を図ったものである。

[西沢泰二]

(3)真珠岩を粉砕し、高温処理して得られる焼成物としてのパーライトは、多孔質で通気性、保水性がよいことから、土壌改良資材、鉢物用土、挿木用土など園芸用配合土として利用されている。

[堀 保男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パーライト」の意味・わかりやすい解説

パーライト
pearlite

炭素を含む鋼のオーステナイトフェライトセメンタイトの薄片層状に共析した組織。セメンタイトの層が乱れたものを擬似パーライト,球状になったものを球状パーライトという。普通の標準状態の鋼中には必ず存在する組織で,フェライトの粘靭性とセメンタイトの硬さが相まって鋼によい機械的性質を与える。炭素 0.8%前後の炭素鋼 (共析鋼) では全部がこの組織で,硬さはブリネル硬さ HB 230程度である。パーライトすなわち真珠組織という美しい名は,薄片組織の厚さがμm程度に薄いため,昔の低倍率の顕微鏡では分解能不足で識別できず,薄片層の凹凸で光線が分光されて試料を動かすと色彩が真珠のように変るためにつけられたのである。トルースタイトソルバイトはパーライトの一層微細な組織である。

パーライト
pearlite

黒曜石,真珠岩などのガラス質火山岩を 1000℃ぐらいに焼いて膨張させた球形の小さな砂利。目方が普通の砂の 10~20%ぐらいで,セメントと混合してパーライトモルタルをつくる。これは軽量であるうえに断熱性,吸音性にすぐれ,断熱材,軽量骨材,軽量プラスターなど建築用材として用いられる。また保水性があり,養分を含まないので,園芸用の育苗にも使用される。

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百科事典マイペディア 「パーライト」の意味・わかりやすい解説

パーライト

最も安定したの組織。フェライトセメンタイトの共析晶で,顕微鏡で見ると両者の薄片状の層が真珠のような光沢を呈するのでこの名がある。オーステナイト状態の鋼を徐冷(焼きなまし)すると得られる。
→関連項目断熱材

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化学辞典 第2版 「パーライト」の解説

パーライト
パーライト
pearlite

オーステナイトがフェライトとセメンタイトとに共析分解するときに形成される層状の共析晶組織.炭素鋼では共析組成C 0.765質量%,共析温度727 ℃ である.オーステナイトの分解は過冷することができるが,共析分解温度が低いほど層間隔は狭くなる.この層間隔はパーライト組織の機械的性質を大きく左右する.層間隔が狭いほど,引張強さは大きく,絞りもやや大きくなる.細かなパーライト組織はソルバイト,トルースタイトとよばれていたが,微細パーライトとよぶのが適切である.

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