翻訳|pearlite
炭素鋼や合金鋼をオーステナイト状態からゆっくり冷却するとき,650~600℃で変態を起こして生ずるフェライトとセメンタイトが交互に層をなす組織。この変態をA1変態という。この組織は斜光線を用いて顕微鏡観察すると真珠(パール)のような光沢を示すところからパーライトと呼ばれる。冷却速度が速くなると生成温度が下がり,パーライトの層間隔は狭くなって硬さを増す。炭素量がおよそ0.8重量%の鋼(共析鋼と呼ばれる)はオーステナイトから直接パーライトが生じるが,炭素量がそれより少ない鋼(亜共析鋼)ではまずフェライト(初析フェライト)が生じ,その後オーステナイトからパーライトが生じる。炭素量が0.8%より多い鋼(過共析鋼)ではセメンタイト(初析セメンタイト)が生じたのちパーライトが生じる。また,鋼を焼きならした場合にもフェライトあるいはセメンタイトとともにパーライトが得られる。層状のパーライトは靱性(じんせい)に乏しいものであるが,A1変態点直下の温度に加熱すると,パーライト中のセメンタイトが球状化して球状パーライトとなり,靱性が得られる。鉄道のレール用鋼材の組織はおもにこのパーライトから成る。
→鋼(はがね)
執筆者:柴田 浩司
(1)流紋岩質のガラス質火山岩で,多数の同心球状の割れ目が発達する。真珠岩ともいう。化学成分として,SiO2,Al2O3,K2Oに富む岩石であるが,さらに2~5%のH2Oを含有することも特徴である。色は灰白であり半透明ガラス状光沢を示し,貝殻状の破面を表す。秋田県,福島県,長野県などに産地が知られている。
(2)前記(1)の一部の産地のものは,その粉砕物を焼成すると含有されていた水分を放出して軽石状に膨張した焼成物が得られる。この焼成物は〈パーライト〉の商品名で市販されている。焼成品は比重がきわめて小さいこと,多孔質であるため,不燃性,軽量性,断熱性をもつ建築材として,また多孔質のための保水性,可溶性無機成分の含有などから土壌混合物として利用される。
執筆者:湊 秀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(1)α(アルファ)鉄の結晶(フェライト)と炭化鉄Fe3Cの結晶(セメンタイト)とが交互に重なり合った層状組織をパーライト組織という。この組織の断面を平滑に磨き、硝酸などでエッチングすると、フェライトだけが腐食され、セメンタイトは腐食されないので、顕微鏡で拡大すると、層状の模様が観察される。また肉眼では、真珠(パール)のように輝いて見えるのでパーライトとよばれている。
パーライトはγ(ガンマ)鉄に炭素の溶け込んだ固溶体(オーステナイト)の共析分解によって形成される。すなわち、鉄と炭素との合金を約900℃に加熱すると、鉄は面心立方晶のγ鉄となり、炭素原子は鉄原子の間隙(かんげき)に溶け込む。これを冷却すると、鉄の結晶構造が体心立方晶に変化してα鉄の結晶(フェライト)になる。この結晶には炭素原子はほとんど溶け込めないので、炭化鉄の結晶(セメンタイト)が同時に発生し、その結果、フェライトとセメンタイトが交互に重なり合ったパーライトが形成される。オーステナイト状態からの冷却を速くすると、パーライトの層状組織が細かくなる。とくに細かなパーライトは、トルースタイトとよばれている。
(2)建築材料にパーライトpearliteとよばれるものがある。これは真珠岩(火山岩の一種)を素材とした多孔質の焼成品で、密度が小さくて、断熱性が優れているために、床材や壁材に使用される。パーライト・コンクリートはセメントにパーライトを混合して、軽量化を図ったものである。
[西沢泰二]
(3)真珠岩を粉砕し、高温処理して得られる焼成物としてのパーライトは、多孔質で通気性、保水性がよいことから、土壌改良資材、鉢物用土、挿木用土など園芸用配合土として利用されている。
[堀 保男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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オーステナイトがフェライトとセメンタイトとに共析分解するときに形成される層状の共析晶組織.炭素鋼では共析組成C 0.765質量%,共析温度727 ℃ である.オーステナイトの分解は過冷することができるが,共析分解温度が低いほど層間隔は狭くなる.この層間隔はパーライト組織の機械的性質を大きく左右する.層間隔が狭いほど,引張強さは大きく,絞りもやや大きくなる.細かなパーライト組織はソルバイト,トルースタイトとよばれていたが,微細パーライトとよぶのが適切である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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