日本大百科全書(ニッポニカ) 「御鈴廊下」の意味・わかりやすい解説
御鈴廊下
おすずろうか
江戸城内、将軍の生活の場である中奥(なかおく)から、御台所(みだいどころ)・側室(そくしつ)の居室のある大奥への通路で、出入りの際に鈴を鳴らして合図をしたためこうよばれる。普段は密閉してある御錠口(おじょうぐち)という杉戸をあけさせ、将軍が奥女中の出迎えを受けて入る幅2間、長さ15間の曲がりくねった畳廊下で、上(かみ)御鈴廊下という。ほかに、明暦(めいれき)の大火(1657)後再建の際に増設した下(しも)御鈴廊下が東側にあり、災害時の避難口として使用した。また、加賀百万石のごとき大大名の場合、表と奥の境目にお錠口、鈴を鳴らして殿様の出入りを合図する御鈴廊下もあったというが、例は少ない。
[稲垣史生]