循環不全と消化管病変

内科学 第10版 「循環不全と消化管病変」の解説

循環不全と消化管病変(循環器系疾患)

(1)循環不全と消化管病変
 消化管も血流障害によって損傷を受ける器官の1つであり,大循環の血流障害(ショック)や局所循環の血流障害(梗塞,動脈痙縮など)で損傷を受けることがある.
a.急性循環不全(ショック)と出血性潰瘍
 敗血症性ショックや血液量減少によるショックの治療中またはその回復後1〜2週間以内に消化管の広範なびらん,潰瘍が出現し,消化管出血をきたすことがある.これは出血性ショックよりも敗血症性ショックにみられることが多く,胃粘膜病変は胃体部に好発する.
b.局所循環不全と消化管病変
 腸間膜動脈不全症があり,粥状硬化症を基に心疾患に由来する塞栓によって急性主幹動脈虚血が発症することがある.また,心拍出量低下や循環血漿量の減少に伴い生じる血管痙縮や薬剤が原因と考えられる非閉塞性主幹動脈虚血をきたすこともある.その他,慢性主幹動脈虚血は血管の粥状硬化性狭窄が原因で,不完全閉塞や側副血行路の存在により通常無症状であるが,食事などの負荷による腸管機能亢進によって症状が誘発されるため,腹部アンギーナとよばれる.
c.特発性腸間膜静脈硬化症
 最近わが国にて報告,確立された比較的まれな原因不明の腸疾患で,腸間膜静脈硬化に起因する還流障害による慢性虚血性大腸病変といわれている.発症は緩徐でおもに腹痛下痢便秘腹部膨満などの症状を呈する.右半結腸が好発部位で内視鏡的には暗青色~赤色の粘膜色調変化や浮腫,狭窄,びらん,潰瘍,血管透見消失などが認められる.画一的な治療方針はないが,症状の再発を繰り返し保存的に改善が得られない症例では外科手術が行われることもある.[安藤貴文・後藤秀実]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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