成長点培養(読み)せいちょうてんばいよう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「成長点培養」の意味・わかりやすい解説

成長点培養
せいちょうてんばいよう

植物の茎や根の成長点またはそれを含む組織の微小片を切り取り無菌的に培養すること。茎の成長点培養のことを茎頂培養という。培地寒天培地、ときにより液体培地を用いるが、それらは基本的には無機の植物必須(ひっす)要素と適宜の植物成長調節物質などを含んだものからなり、その量や組成は供試植物の種類や培養目的によって異なる。成長点培養は、切断部におけるカルスの形成や、そのカルスからの再分化による個体形成の機構、あるいは根、茎、葉などの器官の分化の研究に大いに役だつばかりでなく、培養によって多量の完全個体を再生させることができるので、ラン類をはじめとする栄養系による諸作物の繁殖に応用される。また、ウイルス保毒植物でも成長点およびその近くの組織はウイルス無病あるいは濃度がきわめて薄いとされ、この部分の組織培養からウイルス無病個体が得られるため、成長点培養は、一般にウイルス無病系統の育成の一方法としても用いられる。

[飯塚宗夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「成長点培養」の意味・わかりやすい解説

成長点培養
せいちょうてんばいよう
apical meristem culture

植物の茎や根の先端にあって,細胞分裂増殖が盛んな部分 (成長点) を切り出して培養器中で培養する方法をいう。成長点から取り出された細胞は,分裂を繰り返し,不定形の細胞塊 (カルス) を形成する。培地成分などの培養条件を変えると,このカルスから植物体に再生させることができる。成長点培養によりウイルスに感染していない苗木を大量に作ることが可能となった。現在,洋ランイチゴ,サトイモ,コンニャクなどで,成長点培養による苗木獲得が実用化されている。

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