カルス(読み)かるす(英語表記)callus

翻訳|callus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルス」の意味・わかりやすい解説

カルス
Kars

トルコ北東端に位置する都市で,同名県の県都。アルメニアとの国境に近く,アラス川の支流カルス川に沿い,標高 1750mの高原にある。カルス川によって山手の旧市街と南へ延びる新市街に分けられ,セルジューク朝時代の橋で結ばれている。9~10世紀にはアルメニア人のバグラト朝の支配下にあり,カルス県東部に残るアニ遺跡は当時首都であった都市の遺構である(2016世界遺産の文化遺産に登録)。その後セルジューク朝,モンゴル帝国チムール朝の支配を経て,1514年にオスマン帝国に編入された。ロシア帝国紛争(→露土戦争)が絶えず,1877~78年にはロシアに併合され,1918年にトルコに返還された(→ブレスト=リトフスク条約)。家畜取り引きの中心地で,チーズが有名。粗毛布,カーペットフェルトも産する。重要な軍事基地であり,国内の主要都市とは鉄道,道路で結ばれている。人口 7万8100(2013推計)。

カルス
Carus, Marcus Aurelius

[生]?
[没]283
ローマ皇帝 (在位 282~283) 。ナルボの出身。プロブス帝の近衛長官となり,282年ラエチアで反乱を起し,プロブスが殺されたのち,元老院承認を求めることなく一方的に即位通告。ドナウ河畔にクワディ人とサルマチア人を破り,またササン朝ペルシア進攻クテシフォンを占領し,さらに前進したが急死した。近衛長官アペルの裏切り,または落雷による死と伝えられる。

カルス
callus

植物体の組織一部切り取り,適当な条件で人工培養すると,増殖して無定形細胞塊ができ,これをカルスと呼ぶ。未分化な状態のカルスにオーキシンサイトカイニンなどの植物ホルモンを投与すると,芽や根,胚が分化し,さらに完全な植物体にまで成長させることができる。カルス培養は植物のバイオテクノロジーを支える重要な技術で,そのままでは栽培しにくいランをカルスから培養し,花を咲かせたり,作物の育種にも応用されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルス」の意味・わかりやすい解説

カルス
かるす
callus

かつては、傷ついた植物体の傷口にできる癒傷組織(ゆしょうそしき)のことをいったが、現在では切り取った植物体の一部を、適切な寒天栄養培地上で培養するとき、細胞分裂によって増殖する無定形の細胞の塊のことをいう。カルスが生じることを脱分化といい、植物体のどの組織からもカルスは得られる。継代培養をすれば、カルスは無限に増やすことができる。カルスからは、オーキシンやサイトカイニンなどの植物ホルモンの働きで芽や根を再分化させることができる。

[勝見允行]

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