日本大百科全書(ニッポニカ) 「戸下温泉」の意味・わかりやすい解説
戸下温泉
としたおんせん
熊本県北東部、阿蘇(あそ)郡南阿蘇村(みなみあそむら)戸下にあった温泉。泉質は含重炭酸土類石膏芒硝(せっこうぼうしょう)泉。阿蘇カルデラの西壁が雨水の侵食、あるいは断層によって切られてできた谷間、いわゆる立野(たての)火口瀬の中に位置する。黒川が白川に合流する手前の安山岩質断崖(だんがい)の割れ目からの自然湧出(ゆうしゅつ)を掘削して泉源とするこの温泉は、泉量の多い横穴式温泉としても有名であった。間近に中央火口丘の雄大な山裾(やますそ)、原生林で知られた北向(きたむき)山、数鹿流(すがる)ヶ滝などの自然景観に恵まれ、また国道57号、JR豊肥(ほうひ)本線立野駅からの便もよいので、宿泊施設の少ないわりに宿泊者数は多く、年々伸びていたが、1979年(昭和54)着工の立野ダムにより廃泉となった。
[山口守人]