阿蘇カルデラ(読み)あそかるでら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「阿蘇カルデラ」の意味・わかりやすい解説

阿蘇カルデラ
あそかるでら

九州の中央、熊本県東部にあるカルデラ。世界有数の美しい地形をもつ。南北約25キロメートル、東西約18キロメートル、面積約350平方キロメートルで、火口原に5万余人が居住する。カルデラの大きさとしては、日本では屈斜路カルデラ(くっしゃろかるでら)に次いで2番目。内部には最高峰の高岳(1592メートル)や、有史以後も噴火を反復してきた中岳などの中央火口丘がある。南の火口原南郷谷(なんごうだに)を流れる白川は、北の火口原阿蘇谷を流れる黒川をあわせ、立野(たての)火口瀬から熊本平野を経て、有明海(ありあけかい)に注ぐ。阿蘇くじゅう国立公園の拠点であり、2009年(平成21)に「阿蘇ジオパーク」として日本ジオパークに選定された。

 第四紀更新世(洪積世)後期(約27万~約9万年前)に、4回の大噴火を繰り返し、約9万年前の4回目の超巨大噴火による陥没によって、ほぼ現在の阿蘇カルデラの形ができた。その後、侵食によってカルデラ壁が後退し、現在の大きさになった。この4回目の大噴火のときには、合計約600立方キロメートルもの火山灰火砕流堆積(たいせき)物が放出され、火砕流は最長で約150キロメートル流れ、九州中北部全体を覆いつくした。また、それに伴った火山灰はほぼ日本中を覆い、北海道でも約10センチメートルの厚さで堆積した。中部九州に厚く堆積した火砕流は溶結して、見かけ上溶岩のように堅い溶結凝灰岩になり、「阿蘇溶岩」とよばれた。カルデラの内部にある中央火口丘のうち、根子(ねこ)岳だけは2回目と3回目の大噴火の間に形成された中央火口丘であると考えられている。カルデラ内には湖ができたが、更新世末ないし完新世(沖積世初頭(約1万年前)に西側の外輪山が切断され立野火口瀬を生じ、湖水が流出した。

 なお、九州中部から南部には、阿蘇、姶良(あいら)、指宿(いぶすき)(阿多(あた))、鬼界(きかい)の四大カルデラが連なり、同様な成因でほぼ同地質時代にできたことが、1943年(昭和18)地質学者松本唯一(ただいち)(1892―1984)によって提唱された。

[諏訪 彰・中田節也]


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