手繰(読み)てぐり

精選版 日本国語大辞典 「手繰」の意味・読み・例文・類語

て‐ぐり【手繰】

〘名〙
① 糸などを手で自分の方へ順に少しずつ引きよせること。手でくりとること。また、そのもの。たぐり。
曾丹集(11C初か)「夏引の白糸のてくりまだしきに夜は短く成にける哉」
② つぎつぎと手から手へ物を受け渡して運ぶこと。順繰りに手渡しすること。
浮世草子・西鶴諸国はなし(1685)一「間鍋塩辛壺を、手ぐりにしてあげさせ」
③ 仕事、用事などさしつかえをやりくりすること。仕事のくりあわせ。都合。
※怪化百物語(1875)〈高畠藍泉〉下「何さ差支はございませんが、些(ちと)手都合(テグリ)がありましたんだから」
④ 「てぐりあみ(手繰網)」の略。また、それを用いて漁をすること。
太平記(14C後)一八「手繰(テグリ)する海士(あま)小舟に打乗て」
※浮世草子・武道伝来記(1687)三「予州宇和島と云所に手繰(クリ)の網をおろさせ女まじりに今や引らん」
※浮世草子・好色万金丹(1694)二「両国橋に手ぐり漕ぐ身も顔のうるむ頃」

た‐ぐ・る【手繰】

〘他ラ五(四)〙
両手を交互に動かしたり、綱状のものを繰ったりして手もとに引き寄せる。手で順々にひき入れる。
※曾丹集(11C初か)「みをのうらのひきあみのつなのたくれともなかきははるのひと日なりけり」
② 綱を順々に導き出すように、道筋や話の筋を求めたり、引き出したりする。
草枕(1906)〈夏目漱石〉一三「老人の言葉の尾を長く手繰(タグル)と、尻が細くなって、末は涙の糸になる」
相撲で、突っ張りで攻めてくる相手の腕をつかみ、引っ張りよせ、相手の体勢をくずす。
④ ⇒たくる

た‐ぐり【手繰】

〘名〙
① たぐること。手もとに繰りよせること。また、その用具
※浄瑠璃・国性爺合戦(1715)道行「磯に手ぐりのくりやかは波にゆらるるつり舟に」
※浮世草子・好色万金丹(1694)二「両国橋に手ぐり漕ぐ身も顔のうるむ頃」

て‐ぐ・る【手繰】

〘他ラ四〙
① 両手を交互に動かしたり、綱状のものを繰ったりして手もとにひきよせる。たぐる。
物事筋道や話の筋などを求めたり、引き出したりする。たぐる。
不言不語(1895)〈尾崎紅葉〉八「之を手繰(テグ)りて或は不思議の紛乱解くるよしもあらむと」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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