井原西鶴(さいかく)の浮世草子。1687年(貞享4)4月、江戸・万屋(よろずや)清兵衛、大坂・岡田三郎右衛門より刊行。八巻八冊。副題に「諸国敵討(かたきうち)」とあるように、北は奥州福島、南は薩摩(さつま)に及ぶ復讐譚(ふくしゅうたん)32話を集めたものである。巻七の二と巻八の一は、1672年(寛文12)2月の江戸・市谷浄瑠璃(じょうるり)坂の奥平源八の敵討、巻八の一は、1639年(寛永16)7月の京都四条河原における曽我(そが)九之助の敵討、巻八の四は、1634年(寛永11)11月の伊賀・上野での渡辺数馬・荒木又右衛門の敵討というふうにモデル事件を指摘することができる。ふとした事件がきっかけとなって起こる、討つ者と討たれる者との転変たる運命の物語を描き、武家物の新領域を開拓した作品である。
[浅野 晃]
『横山重・前田金五郎校注『武道伝来記』(岩波文庫)』▽『麻生磯次・冨士昭雄訳注『対訳西鶴全集7 武道伝来記』(1978・明治書院)』
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浮世草子。8巻。井原西鶴(さいかく)作。1687年(貞享4)刊。副題に「諸国敵討」とあるように,全国の敵討を素材にした短編32話からなる。事件をモデルにした話もあるが,ほとんどが創作と考えられる。「若衆盛は宮城野の萩」のように敵討成功を描く話もあるが,結末が悲劇に終わるものが多い。武家社会の矛盾を描き出した異色作である。「定本西鶴全集」所収。
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