抗鬱剤(読み)こううつざい

百科事典マイペディア 「抗鬱剤」の意味・わかりやすい解説

抗鬱剤【こううつざい】

鬱(うつ)病などの治療薬のこと。日本で一般的に使われているのは三環系抗鬱薬という種類で,暗い気分や強い不安感を軽減する目的でつくられている。これに対して,1987年に米国のイーライリリー社から発売されたプロザック(薬剤名はフルオキセチン)は,鬱病の治療だけでなく,病気でない人が服用しても自信が高まったり,積極的な性格になるといった効能もあることで,一般的な抗鬱剤とは大きく異なる。さらに,プロザックはパニック障害強迫神経症外傷後ストレス障害などにも効果があるとされ,このため全世界で話題を呼んだ。日本でもインターネットなどを通じて個人輸入する人は少なくない。 プロザックはSSRI(selective serotonin reuptake inhibitor=選択性セロトニン再取込み阻害薬)という新しい種類の抗鬱剤に分類され,独特の化学構造をもつ。ある信号が神経を伝わるには,何種類もの神経伝達物質神経細胞シナプスを通るが,SSRIはこのうちセロトニンという神経伝達物質の伝達系統のみに作用する。鬱状態の原因としては,セロトニンの放出量が少ないこともその一つとされる。このため,シナプス間のセロトニン濃度を高めて信号の通りをよくすることで,鬱症状を和らげ,さらには積極的な性格に変える効能をもつというメカニズムになっている。 プロザックは軽度から中度の患者には,一般の抗鬱剤と同等またはそれ以上の効果が認められるが,重度の鬱病患者には効果が劣るとされている。 また,プロザックには副作用も報告されており,イーライリリー社によると,頭痛(20.9%),吐き気(21.1%),神経痛(14.9%)が多くみられる。また,米国やカナダの報告では,自殺衝動の可能性もあり,医療訴訟も起きている。
→関連項目摂食障害

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