パニック障害(読み)ぱにっくしょうがい(英語表記)panic disorder

翻訳|panic disorder

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パニック障害」の意味・わかりやすい解説

パニック障害
ぱにっくしょうがい
panic disorder

パニック発作を頻繁に引き起こす疾患のこと。恐慌性障害ともいう。アメリカの精神科診断分類(DSM)第4版(1994)では不安障害の一つとしている。従来は不安神経症といわれた。急に強い不安や恐怖にかられ、激しい動悸(どうき)、息切れ発汗吐き気めまい、胸苦しさなどを感じるのがパニックの症状である。逃げられない場所にいるという「広場恐怖」を伴うことが多い。混雑した駅やデパート、電車、バス、エレベーターの中などで突然、極度の不安や恐怖にかられる。頻度は人によりまちまちで、1日に何度も起こることもある。症状から、最初は心臓の病気を疑うが、検査では異常がなく、パニック障害と診断されるケースが多い。まじめできちょうめんな性格の人に多いとされる。心理的、身体的なストレスが引き金となり、交感神経が興奮し、神経伝達物質ノルアドレナリンが過剰に分泌されて起こる、とみられている。人込みにでるのが不安になり、行動や生活が狭められる可能性があり、うつ症状がでたりすることもある。治療は、抗不安薬、抗うつ剤SSRI(セロトニン再取り込み阻害剤)などの薬を用いる一方、呼吸法や精神療法などで心身をリラックスさせる。

田辺 功]

『貝谷久宣、不安・抑うつ臨床研究会編『パニック障害』(1998・日本評論社)』『米国精神医学会著、日本精神神経学会監訳『パニック障害(米国精神医学会治療ガイドライン)』(1999・医学書院)』『竹内竜雄著『パニック障害 追補改訂版』(2000・新興医学出版社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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