デジタル大辞泉
「パニック障害」の意味・読み・例文・類語
パニック‐しょうがい〔‐シヤウガイ〕【パニック障害】
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パニック‐しょうがい‥シャウガイ【パニック障害】
- 〘 名詞 〙 パニックの発作をくりかえす急性の不安神経症。強い不安におそわれ、めまい、動悸、発汗、口渇、呼吸切迫などを起こし外出恐怖、乗物恐怖を伴う。恐慌性障害。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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パニック障害(心身症)
概念
不安障害に含まれる精神疾患で,パニック発作(表1-6-9,DSM-Ⅳ-TRによる)を繰り返し,予期不安,広場恐怖などを伴う.胸痛や胸部不快感などの胸部症状や,息苦しさなどの呼吸器症状を伴うことから,最初に内科を受診することが多いので,鑑別疾患として知識をもっておくことが望ましい.
疫学
パニック障害は決してまれな疾患ではなく,12カ月有病率は,米国2.7%,日本で0.5%,ドイツで1.8%であると報告されている.また,性差も報告されており,女性の方が男性よりも罹患率が高いという特徴がある.
臨床症状・診断
パニック障害の症状の特徴としては,パニック発作(表1-6-9)の繰り返し,予期不安,広場恐怖,二次的なうつ病の合併があげられる.表1-6-9のパニック発作に示されるように,多彩な身体症状が生じるにもかかわらず,各種検査で症状を説明できる異常が検出されないことが特徴である.
パニック障害の診断基準としては,米国精神医学会のDSM-Ⅳ-TRによるものが代表的である.DSM-Ⅳ-TRでは,まず,最初に,「パニック発作」と「広場恐怖」の定義を行い,その後,それらを用いて,「広場恐怖を伴わないパニック障害」と「広場恐怖を伴うパニック障害」との診断を行う形式となっている.ただし,2013年5月にDSM-5が発刊される予定となっており,パニック障害の診断基準も変更となる可能性がある.
パニック障害の診断基準にもあるように,まず,原因となる可能性のある身体疾患を除外することが必要であり,患者の訴えが多いというだけで,安易に診断を下すべきではない.
病因
現在までのところ,明らかな病因は同定されていない.遺伝的素因に関しても,さまざまな研究が行われ,近年はゲノムワイドな研究も行われているが,再現性のある結果は得られていない.神経学的な研究も行われており,ガンマアミノ酪酸(GABA)の受容体の減少や,セロトニン受容体の減少の報告もあり,後述する薬物療法との関連が想定されている.
治療
1)患者教育: 診断後の重要なステップは,多くの患者が重大な身体疾患をもっているかもしれないという不安をもっているので,パニック障害が精神疾患により身体症状を呈しているということを説明することである.2)薬物療法: メタ解析では,SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と三環系抗うつ薬とベンゾジアゼピン系薬物の有効性が示されているが,ベンゾジアゼピン系薬物の効果は,前2者と比較してやや弱いという結果となっている.わが国では,パロキセチンとセルトラリンのみにパニック障害への適応が認められている.また,効果と副作用の観点からも,SSRIが第一選択とされているが,一般的に,治療効果発現までには,数週間かかることと,投与初期の副作用であるいらいら感の軽減のために,比較的効果発現の早いベンゾジアゼピン系薬物であるロラゼプ酸エチル,アルプラゾラム,ロラゼパム,クロナゼパムなどのベンゾジアゼピン系の抗不安薬も併用される.ただし,ベンゾジアゼピン系抗不安薬は,長期服用で依存を生じることが問題となっている. ただし,予期不安に対する薬物療法の効果は限定的であり,認知行動療法などの心理療法を併用する必要がある.さらに,パニック発作が消失した後に残存するような広場恐怖に対しても認知行動療法が行われている.3)心理療法: 認知行動療法の効果が報告されている.認知行動療法では,パニック障害に関する心理教育,思考の歪みを修整する認知再構成,恐怖を惹起する身体感覚や状況への暴露(回避行動の変化を含む)などである.また,恐怖を惹起する状況への暴露とともに,リラクセーション法を行うことが有効である.さらに,薬物療法と認知行動療法の組み合わせの方が,それぞれ単独の治療よりも効果的であったという報告もある.
予後
薬物療法で50~70%で効果が認められるが,薬物療法終了後に,25~50%が6カ月以内に再発する.30%の患者のみ,寛解後数年間再発が認められない.そして,35%では著明な改善は認められるが,その後,増悪と改善を繰り返す.[吉内一浩・赤林 朗]
■文献
Engel GL: The need for a new medical model: a challenge for biomedicine. Science, 196: 129-136, 1977.
小牧 元, 久保千春,他編:心身症診断・治療ガイドライン2006, 協和企画,東京,
2006.日本心身医学会教育研修会編:心身医学の新しい指針.心身医学,31: 537-573, 1991.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
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パニック障害
ぱにっくしょうがい
panic disorder
パニック発作を頻繁に引き起こす疾患のこと。恐慌性障害ともいう。アメリカの精神科診断分類(DSM)第4版(1994)では不安障害の一つとしている。従来は不安神経症といわれた。急に強い不安や恐怖にかられ、激しい動悸(どうき)、息切れ、発汗、吐き気やめまい、胸苦しさなどを感じるのがパニックの症状である。逃げられない場所にいるという「広場恐怖」を伴うことが多い。混雑した駅やデパート、電車、バス、エレベーターの中などで突然、極度の不安や恐怖にかられる。頻度は人によりまちまちで、1日に何度も起こることもある。症状から、最初は心臓の病気を疑うが、検査では異常がなく、パニック障害と診断されるケースが多い。まじめできちょうめんな性格の人に多いとされる。心理的、身体的なストレスが引き金となり、交感神経が興奮し、神経伝達物質ノルアドレナリンが過剰に分泌されて起こる、とみられている。人込みにでるのが不安になり、行動や生活が狭められる可能性があり、うつ症状がでたりすることもある。治療は、抗不安薬、抗うつ剤SSRI(セロトニン再取り込み阻害剤)などの薬を用いる一方、呼吸法や精神療法などで心身をリラックスさせる。
[田辺 功]
『貝谷久宣、不安・抑うつ臨床研究会編『パニック障害』(1998・日本評論社)』▽『米国精神医学会著、日本精神神経学会監訳『パニック障害(米国精神医学会治療ガイドライン)』(1999・医学書院)』▽『竹内竜雄著『パニック障害 追補改訂版』(2000・新興医学出版社)』
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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「パニック障害」の意味・わかりやすい解説
パニック障害【パニックしょうがい】
思い当たる原因はないが,突発的に強い不安や動悸(どうき),めまい,呼吸困難など,多くの身体的・精神的な発作に襲われ,死の恐怖や自分自身をコントロールできない症状を起こすこと。アメリカ精神医学会の診断・統計マニュアルでは,こうした発作のうち4つ以上の症状が10分間続けて起こる場合,と定義されている。 患者は75〜100人に1人といわれるが,強迫神経症や不安神経症と似た症状もみられるため,医師によってはこれらの病気と診断するケースもある。 最近では,脳の画像診断の技術が進歩したため,パニック障害の原因は神経系の機能異常であることもわかってきた。治療は薬物療法が中心だが,なかなか治らない場合は行動療法も行われる。 米国のパニック障害研究所(The Panic Disorder Institute)によると,パニック障害によって脳卒中,心臓発作,高血圧などを発症するリスクが高くなり,患者の3分の2は重症な鬱(うつ)病を抱えている。また,いつ発作が起こるかわからないため,フルタイムで働いている患者は半数に過ぎず,日常生活に支障をきたしているケースも多い。
→関連項目抗鬱剤
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パニック障害
パニックしょうがい
panic disorder
突然,心臓発作のように激しい動悸や息苦しさに襲われ,そのまま死んでしまうのではないかという恐怖・不安に駆られる症状。かつては不安神経症,自律神経失調症,心臓神経症などと呼ばれていたものであるが,世界保健機関 WHOの疾病分類でパニック障害として正式に位置づけられた。心臓疾患による発作によるものではないかと考えられていたが,原因はまだ完全には明らかではない。ストレスが一因ともみられている。抗不安剤や心理療法によって,比較的短期で発作も治まり,社会復帰できる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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