拮抗力の理論(読み)きっこうりょくのりろん(英語表記)theory of countervailing power

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

拮抗力の理論
きっこうりょくのりろん
theory of countervailing power

アメリカの経済学者J・K・ガルブレイスが、その著『アメリカ資本主義』(1952)で唱えた現代資本主義の自己調整機能に関する理論。従来の経済学では、資本主義経済の自己調整機能を、おもに市場の同じ側でおこる競争に求めてきた。たとえば、ある商品の需要が増加すると価格が上昇するが、それはただちに供給者の新規参入をもたらして、供給増・価格下落がおこる。しかし独占ないし寡占が成立すると、競争が消滅して、こうした自己調整機能が働かなくなると考えた。これに対してガルブレイスは、たとえばアメリカ経済では供給側がほとんど寡占化しているが、それはかならずしもアメリカ資本主義の自己調整機能の喪失を意味しないとみた。その理由は、市場の他の側に抑制力が生まれるためであり、これを「拮抗力」と名づけた。売り手の寡占企業に対抗する買い手の百貨店、協同組合、スーパーマーケットや、労働力の買い手としての大企業に対する労働組合、また売り手に対する消費者側の消費組合、生活協同組合などがその好例である。[一杉哲也]
『J・K・ガルブレイス著、藤瀬五郎訳『アメリカの資本主義』(1970・時事通信社)』

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