日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガルブレイス」の意味・わかりやすい解説
ガルブレイス
がるぶれいす
John Kenneth Galbraith
(1908―2006)
カナダ生まれのアメリカの経済学者。トロント大学卒業後、カリフォルニア大学に学ぶ。リベラル派知識人として知られ、1943~48年に雑誌『フォーチュン』の編集、民主党政府の物価行政局や経済保障対策局などにも関係、1961~63年にはケネディ政権下のインド大使を務めた。48~74年ハーバード大学教授、72年アメリカ経済学会会長。異端的立場から、現代資本主義分析につねに鋭い問題提起を続けてきた。『アメリカの資本主義』American Capitalism : The Concept of Countervailing Power(1952)では、「拮抗(きっこう)力」論を主張、『ゆたかな社会』The Affluent Society(1958)では、現代社会がインフレ、生産の社会的バランスの喪失、「依存効果」などの病を抱えていることを指摘し、『新しい産業国家』The New Industrial State(1967)では、現代の大企業を支配しているのは、さまざまの分野の専門家集団たる「テクノストラクチュア」であることを主張、『経済学と公共目的』Economics and the Public Purpose(1973)では、中小企業の保護と住宅・交通・医療・教育分野の公有化を提唱した。1977年に出版された『不確実性の時代』The Age of Uncertaintyは世界的ベストセラーとなり、同書の日本語版は翌78年に刊行され「不確実性の時代」は流行語にもなった。『権力の解剖』The Anatomy of Power(1983)では、経済活動と権力の関連を総括的に分析している。その後、『バブルの物語』A Short Story of Financial Euphoria(1990)、1991年刊行の『実際性の時代』The Age of Pragmatismは、経済学者の岸本重陳(しげのぶ)(1937―99)との対論集であり、ほかに『満足の文化』The Culture of Contentment(1992)などの著作がある。
[中村達也]
『都留重人監修『ガルブレイス著作集』全10巻(1980~83・TBSブリタニカ)』▽『鈴木哲太郎訳『ゆたかな社会』(1985・岩波書店)』▽『岸本重陳共著・訳『実際性の時代』(1991・小学館)』▽『橋本恵訳『20世紀を創った人たち――ガルブレイス回顧録』(1999・TBSブリタニカ)』▽『角間隆訳『日本経済への最後の警告』(2002・徳間書店)』▽『『ガルブレイスわが人生を語る』(2004・日本経済新聞社)』▽『斎藤精一郎訳『不確実性の時代』上下(講談社文庫)』▽『中村達也著『ガルブレイスを読む』(1988・岩波書店)』▽『根井雅弘著『ガルブレイス』(1995・丸善)』▽『リチャード・パーカー著、井上廣美訳『ガルブレイス――闘う経済学者』上中下(2005・日経BP社)』