赤外線吸収スペクトル(読み)せきがいせんきゅうしゅうすぺくとる(その他表記)infrared absorption spectrum

日本大百科全書(ニッポニカ) 「赤外線吸収スペクトル」の意味・わかりやすい解説

赤外線吸収スペクトル
せきがいせんきゅうしゅうすぺくとる
infrared absorption spectrum

物質に赤外線を照射したとき、物質がある特定の赤外線を吸収して得られるスペクトル

 物質内の原子は、化学結合をしているが、原子の位置はわずかながら動いているので、化学結合を二つの原子がばねでつながっている形のモデルで表すことができる。二つの原子の質量m1m2、ばねの強さをKとすると、結合の間に働く力はフック法則で表され、ばねの振動数ν(ニュー)は、

で表される。分子の世界でもこの考えが適用され、第一近似としては、

が成り立ち、このνv分子振動の振動数とよばれ、赤外線の振動数に対応する。したがって、この分子振動が照射された赤外線の波長と一致すると、赤外線が物質に吸収され、スペクトルが観測される。

 一般に、分子の構成原子数をNとすると、3N-6個の分子振動がある。このうち、振動によって双極子モーメントが変化する場合には赤外線吸収スペクトルで、分極率が変化するとラマン効果で観測することができる。炭素化合物の構造決定、結合状態の研究に欠かせない実験手段で、最近ではフーリエ解析型の赤外線分光器が開発されている。

[下沢 隆]

『L. H. Little著、長谷川正知・原納淑郎・松下薫一訳『吸着と赤外線吸収スペクトル』(1971・化学同人)』『中西香爾他著『赤外線吸収スペクトル 演習編』『赤外線吸収スペクトル 定性編』改訂版(1978・南江堂)』『田中誠之・寺前紀夫著『赤外分光法』(1993・共立出版)』

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最新 地学事典 「赤外線吸収スペクトル」の解説

せきがいせんきゅうしゅうスペクトル
赤外線吸収スペクトル

infrared absorption spectrum

分子または強く結合した原子は常にその重心のまわりを振動または回転運動している。そして,この運動の周期はそれぞれの原子の結合について特定の値を示す。この振動周期に対応する波数をもった電磁輻射線のエネルギーはこの振動に吸収され,他の波数のものは通過する。この吸収される波数は赤外線の領域にあるため,鉱物に赤外線を照射してその吸収スペクトルを測定することによって結合状態について種々の知識が得られる。通常の無機化合物では1,000~300cm1が基礎的振動の範囲であって鉱物には特に重要である。鉱物では,1)化学組成に相当の幅がある場合の組成変化,2)多形,3)鉱物中の水の結合様式の種類などを調べるのに有効。

執筆者:

参照項目:フーリエ変換赤外分光法

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「赤外線吸収スペクトル」の意味・わかりやすい解説

赤外線吸収スペクトル
せきがいせんきゅうしゅうスペクトル
infrared absorption spectrum

赤外線領域 (多くの場合,波数 4000~650cm-1 ) に現れる分子の振動に基づく吸収スペクトル。 IRスペクトルとも略称する。ラマンスペクトルとともに物質の同定に用いられる。測定に用いられるプリズムによって近赤外領域 ( 4000~2500cm-1 ) ,岩塩領域 ( 4000~650cm-1 ) などに分けられる。これらの領域の吸収は分子振動エネルギー準位間の遷移によるものが多いので,有機化合物の官能基の伸縮,変角振動などが現れる。そのため水酸基,カルボニル基,アミノ基などの決定によく利用される。

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