基準振動(読み)きじゅんしんどう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「基準振動」の意味・わかりやすい解説

基準振動
きじゅんしんどう

両端を固定した弦や、空洞中の気柱、つなぎ合わせた振り子などを振動させるとき、いくつかの特定の振動数の振動のみが発生する。これを基準振動または固有振動という。糸の長さもおもりの質量も等しい二つの単振り子を並べ、二つの単振り子の糸を水平な糸でつないでつくった複振り子の場合、一つの単振り子の振動は他の単振り子の振動に影響を及ぼし、二つの単振り子の振動は時間的な消長を繰り返す。すなわち、一つの単振り子が大きく振れているときには、他の単振り子はほとんど揺れず、やがてその逆となり、以後これを繰り返す(図A)。ところが、二つの単振り子が逆方向に揺れる場合と同一方向に揺れる場合(図B)には、振動のようすは時間が経過しても変わらない。このような振動が基準振動で、この振動の仕方を基準振動のモードという。複振り子に限らず、n個の調和振動子の間に相互作用が存在するときには、n個のモードの基準振動が生ずる。そして一般の振動は基準振動の重ね合わせとみなすことができる。

[飼沼芳郎]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「基準振動」の解説

基準振動
キジュンシンドウ
normal vibration

正規振動ともいう.分子を構成している原子核は,それぞれの平衡点の近傍で振動しており,通常その振幅は,位置エネルギーが各核の変位座標rにより,

でよく近似できる程度の微小なものである.このような場合,ri の一次結合からなる適当な座標を用いることによって,分子振動運動方程式は,n原子分子において,3n - 6(直線分子では3n - 5)個の互いに独立な調和振動子のそれと等価な形に変換することができる.このような,各調和振動子にそれぞれ対応する分子振動をその分子の基準振動といい,相当する座標を基準座標という.また,各基準振動で記述される分子振動の型を基準モード(normal mode)という.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の基準振動の言及

【振動】より

…この場合,個々の振子の振動は簡単に(3)の形の式で表され,二つの振子の振動数も等しくなる(ただし,同じ向きの場合と逆の向きの場合とでは振動数が違う)。この振動を基準振動という。一般の場合にはこの二つの基準振動が重なり合って複雑な振動が起きるが,基準振動の考え方を用いるとその複雑な振動を明快に説明できる。…

※「基準振動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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