日本大百科全書(ニッポニカ) 「基準振動」の意味・わかりやすい解説
基準振動
きじゅんしんどう
両端を固定した弦や、空洞中の気柱、つなぎ合わせた振り子などを振動させるとき、いくつかの特定の振動数の振動のみが発生する。これを基準振動または固有振動という。糸の長さもおもりの質量も等しい二つの単振り子を並べ、二つの単振り子の糸を水平な糸でつないでつくった複振り子の場合、一つの単振り子の振動は他の単振り子の振動に影響を及ぼし、二つの単振り子の振動は時間的な消長を繰り返す。すなわち、一つの単振り子が大きく振れているときには、他の単振り子はほとんど揺れず、やがてその逆となり、以後これを繰り返す( )。ところが、二つの単振り子が逆方向に揺れる場合と同一方向に揺れる場合( )には、振動のようすは時間が経過しても変わらない。このような振動が基準振動で、この振動の仕方を基準振動のモードという。複振り子に限らず、n個の調和振動子の間に相互作用が存在するときには、n個のモードの基準振動が生ずる。そして一般の振動は基準振動の重ね合わせとみなすことができる。
[飼沼芳郎]