捜査公判協力型協議合意制度(読み)ソウサコウハンキョウリョクガタキョウギゴウイセイド

デジタル大辞泉 の解説

そうさこうはんきょうりょくがた‐きょうぎごういせいど〔サウサコウハンケフリヨクがたケフギガフイセイド〕【捜査・公判協力型協議・合意制度】

刑事事件被疑者被告人が、共犯者など他人犯罪について供述証言をしたり、証拠を提出したりする見返りとして、検察官求刑を軽くしたり不起訴処分にしたりすることができる制度。日本における司法取引制度として、平成30年(2018)6月から導入。協議・合意制度。合意制度。日本版司法取引制度。
[補説]一部の財政経済犯罪(文書偽造・贈収賄詐欺横領租税に関する法律違反、金融商品取引法違反等)と薬物銃器犯罪に適用され、弁護人の同意のもとで、書面で合意する必要がある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

知恵蔵 の解説

捜査公判協力型協議合意制度

刑事事件の容疑者・被告が共犯者ら他人の犯罪を明かし、その見返りに検察官が起訴の見送り、取り消しや求刑の軽減などをはかれるという制度。容疑者・被告と検察官だけでなく、弁護人を交えた協議や書面での合意が必要となる。警察・検察の取り調べの可視化や通信傍受の対象拡大などを盛り込んだ改正刑事訴訟法(2016年5月成立)の施行に伴い、18年6月1日から導入された。同法は、合意制度の対象犯罪を贈収賄・詐欺事件などの財政経済犯罪と薬物・銃器事件などの組織犯罪と限定している。ただし、導入前の3月に閣議決定された政令で、独占禁止法違反、金融商品取引法違反、会社法違反、著作権法違反なども加えられた。
政府は略称の「合意制度」を強調しているが、米国などが採用している司法取引に類することから、「日本版・司法取引制度」とも呼ばれる。司法取引は、容疑事実の一部を認める代わりに他の罪を軽減してもらう「自己負罪型」と日本が今回導入した「他人負罪型(捜査公判協力型)」の二つに大別される。米国は両方とも採用しているが、日本は「自己負罪型」は採用していない。
導入の最大の目的は、企業や暴力団などを念頭に置いた組織的犯罪の全容解明である。「取り調べ」への過度な依存からの脱却が期待される一方、虚偽供述によって冤罪(えんざい)が生まれる危険性が指摘されており、国会審議中にも野党議員から、引き込み供述(無実の他人に不利益を生じさせる供述)のリスクがある「冤罪続出法案」という批判の声が出た。虚偽供述に対しては5年以下の懲役という罰則規定も設けられているが、制度運営上の実際の裁量権は検察側に大きく、有効かつ適正に運営されるのか、不明な点は多い(2018年5月現在)。

(大迫秀樹 フリー編集者/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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