排出量取引制度(読み)はいしゅつりょうとりひきせいど

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

排出量取引制度
はいしゅつりょうとりひきせいど

環境汚染物質の排出量を抑制するために用いられる政策手法の一つ。規制対象物質の排出許容量(排出量あるいは排出枠などとよばれる)を主要排出源である企業等主体に割り当て、実際の排出量が排出枠を下回る主体と、排出枠を上回る、あるいは排出枠を達成しようとする主体等との間で余剰排出枠の売買を可能にする仕組みである。排出総量に上限を設け、過不足分を取引する方式は、キャップ・アンド・トレードとよばれる。排出量取引自体は、規制対象物質の削減に寄与するものではないが、直接規制よりも目標達成にかかる社会全体の費用を低減させる経済的手法として用いられる。他方、排出枠の割当方法をはじめ、産業部門間あるいは企業間の公平性を確保するために重要な論点が多く、合意形成が困難な側面もある。
 これまでに、二酸化硫黄(いおう)および窒素化合物排出量を対象としたアメリカの大気浄化法(1990年改正)や、オゾン層破壊物質を対象とした国際的な取組みのモントリオール議定書(1990年改正)等が実施されており、近年では温室効果ガスを対象にした実施事例が多数ある。国や企業が温室効果ガスの排出削減目標を達成するための補完的手段として、京都議定書に排出量取引が規定されたことを背景に、2002年にイギリス排出量取引制度が、2005年にEU排出量取引制度等が導入されたほか、2003年から2010年まで設置されていたシカゴ気候取引所のように民間主導の自主参加型プログラムも試みられた。日本では、環境省が自主参加型排出量取引制度Japan's Voluntary Emissions Trading Scheme(略称JVETS)を2005年(平成17)に立ち上げたが、政府は、2020年までに1990年比25%削減という温室効果ガスの削減目標達成に向け、より捕捉(ほそく)範囲の広い排出量取引制度を導入する意向を示している。[伊藤葉子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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