炭素循環経済(読み)たんそじゅんかんけいざい(その他表記)Circular Carbon Economy

日本大百科全書(ニッポニカ) 「炭素循環経済」の意味・わかりやすい解説

炭素循環経済
たんそじゅんかんけいざい
Circular Carbon Economy

大気中に存在する二酸化炭素(CO2)や温室効果ガス全体への対応に関して、「削減(Reduce)」「再利用(Reuse)」「再循環(Recycle)」「除去(Remove)」からなる4段階での循環構造を基礎として、全体を俯瞰(ふかん)して包括的な観点から削減を進めていく考え方。英語の頭文字をとってCCEと略称する。包括的に削減を進める、という意味は上記の4段階に関連する技術のすべてを活用して進めていくことが大事である、という基本認識に基づいている。

 「削減」は、大気中に排出されるCO2を削減することであり、省エネルギー、再生可能エネルギー、原子力、CO2フリー水素などの生産・利用促進が該当する。

 「再利用」は、大気中から回収したCO2を化学変化を加えない形で別の用途で利用するものであり、CO2を用いた油田などの増進回収法や、CO2を活用した藻類系バイオ燃料の利用などが含まれる。

 「再循環」は、大気中から回収したCO2に化学変化を加えて別の用途で利用するものであり、CO2コンクリートに吸着させて利用するものや、CO2と水素から合成メタンを製造して利用するものなどが該当する。

 「除去」は、大気中のCO2を回収して除去するものであり、炭素回収・貯留CCS)や直接大気回収(DAC)などが、これにあたる。

 従来の二酸化炭素削減をめぐる議論では、ともすれば、「削減」と「除去」のみ脚光を浴びる場合が多かったが、大気中のCO2・炭素を資源とみなして活用するという点が、炭素循環経済では重要である。また、化石燃料については、化石燃料そのものを問題視する風潮見解に対して、化石燃料そのものではなく、化石燃料消費で発生するCO2が問題なのであり、化石燃料を脱炭素化して活用すれば、全体の循環構造の観点では問題ではない、という思想も含まれている。

 炭素循環経済のコンセプトは、2020年にサウジアラビアが主催したG20サミット(主要20か国・地域首脳会議)で主要な議題の一つとして討議され、世界の注目を浴びた。

小山 堅 2022年1月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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