摘み草(読み)つみくさ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「摘み草」の意味・わかりやすい解説

摘み草
つみくさ

初春山野に出て食用となる野草山菜を採集すること。蔬菜(そさい)栽培が本格化するまでは、ごく一般的な行為であった。『万葉集』巻一にも「籠(こ)もよみ籠持ち掘串(ふくし)もよみ掘串持ちこの岡(おか)に菜採(つ)ます児(こ)……」とある。1年分の山野草を採集して塩漬けにして保存するなどは、いまも盛んに行われている。春早く雪解けのなかから芽を出す山野草には、力強い生命力が感じられ、その生命力を摂取することから薬効を期待することもあった。中国では早くから儀式化していたようで、6世紀の『荊楚(けいそ)歳時記』には、1月7日に7種の若菜を羹(あつもの)にして食べると年中無病でいられるという俗信のあったことを示している。日本でも中古以来、「子(ね)の日の遊び」や「小松引き」が宮廷に取り入れられ、実用的な摘み草に影響を与えている。三月節供の草餅(くさもち)も、母子草ヨモギを摘んできて餅に搗(つ)き混ぜたものである。

[井之口章次]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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