若菜(読み)ワカナ

デジタル大辞泉 「若菜」の意味・読み・例文・類語

わか‐な【若菜】

春に芽ばえたばかりの食用になる草。「若菜を摘む」
年頭祝儀に用いる七種の新菜。古く宮中で、正月の初のの日(のち7日)に、万病を除くとしてこれをあつものにして食べる習わしがあった。
正月7日に七種の新菜を入れて作る餅粥もちがゆ2風習が民間行事化したもの。若菜粥。七草粥 新年》
[類語]青菜野菜蔬菜青物青果洋菜果菜花菜根菜葉菜茎菜葉物花物実物花卉菜っ葉有色野菜緑黄色野菜

わかな【若菜】[書名・狂言]

源氏物語第34・35巻の巻名。上・下に分ける。光源氏39歳から47歳。女三の宮の光源氏への降嫁明石女御の皇子出産、柏木と女三の宮との事件などを描く。
狂言和泉流果報者仲間と野遊びに出かけ、若菜摘みに来た大原女おはらめたちと出会って酒盛りとなる。

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精選版 日本国語大辞典 「若菜」の意味・読み・例文・類語

わか‐な【若菜】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 春さきに萌え出る蔬菜(そさい)の類。摘んで、羹(あつもの)にしたり餠粥に入れたりなどして食べる。千代菜草。《 季語・新年 》
      1. [初出の実例]「河上に洗ふ若菜(わかな)の流れ来て妹があたりの瀬にこそ寄らめ」(出典:万葉集(8C後)一一・二八三八)
    2. 年頭の祝儀に用いる菜。公家の行事として、正月の初の子(ね)の日、七日の白馬(あおうま)の節会などにこの羹を食べるならわしがあった。
      1. [初出の実例]「ことものども、長櫃にになひつづけておこせたり。わかなぞけふをばしらせたる」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月七日)
    3. 正月七日に七種の菜を入れて作る餠粥。の風習が民間行事化したもので、江戸時代には若菜の節(せち)として確立しており、この日は将軍以下すべてがこれを食し、年中の病災をはらい、無事息災を祝った。若菜粥。七草粥。《 季語・新年 》
      1. [初出の実例]「源氏ならで上下にいはふ若菜哉〈親重〉」(出典:俳諧・犬子集(1633)一)
    4. 年ごろのおとめのたとえ。
      1. [初出の実例]「寐餠 津軽の売女也〈略〉年頃なる小女をさして若菜と云。寐餠に対していふか」(出典:随筆・北里見聞録(1817)一)
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 「源氏物語」第三四、三五帖の巻名。上下に分ける。光源氏三九歳の一二月から四七歳の一二月まで。朱雀院の女三宮の光源氏への降嫁と、それを迎える紫上の苦悩、柏木の女三宮への思慕とそれによる女三宮の懐妊、その真相を源氏に知られた柏木の心痛と発病などを描く。いわゆる正編第二部のはじまりの巻。
    2. [ 二 ] 狂言。和泉・鷺流。大名が供をつれ野遊びに出るが、若菜を摘みに来た大原女たちと出会って酒盛りとなり謡い舞う。大蔵流でも江戸初期の「大蔵虎明本」にはこの曲が見られる。

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改訂新版 世界大百科事典 「若菜」の意味・わかりやすい解説

若菜 (わかな)

日本の芸能,音楽の曲名

(1)狂言 女狂言。現在,和泉流にのみある。果報者が,同朋(僧形の近侍)のかい阿弥を連れて野辺へ遊びに出る。そこへ大原女たちが〈春ごとに君を祝ひて若菜摘む……〉と謡いながら通りかかる。果報者はその風情に心ひかれ,女たちを呼んで,ともに酒盛りをして,かわるがわる謡い舞う。やがて日も暮れたので,なごりを惜しみつつ別れを告げる。登場は果報者,かい阿弥の2人に大原女数人で,かい阿弥がシテ。ほかに囃子(笛,小鼓,大鼓,太鼓)が入る。早春の京都北郊の野辺を背景に,小舞謡や《閑吟集》の歌謡を豊富にとりこんだ,抒情的な狂言。下リ端(さがりは)の囃子で登場する大原女は,めいめい花を挿した柴を左手で頭上にかざし,謡を同吟する。《証如上人日記》(《天文日記》)天文5年(1536)1月2日の条に《若菜摘》の古名で見え,また《天正狂言本》にもある古作の狂言。大蔵流も《虎明(とらあきら)本》まではあった。
執筆者:(2)地歌・箏曲 京風手事物。松浦検校作曲,八重崎検校箏手付け。大坂の前田某作詞。正月の若菜摘みを歌ったもの。手事は《八重衣》の手事に影響を与えている。

(3)箏曲組歌 京都の生田流の新曲。表組。八重崎検校の作曲ともいわれる。《橘》《七夕》《榊葉》とで《四季組》ともいい,その第1曲。素性法師,清原元輔,平兼盛の和歌3首を組み合わせる。いずれも賀の歌。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「若菜」の意味・わかりやすい解説

若菜
わかな

地歌・箏曲の曲名。京風手事物。松浦検校作曲。箏手付は八重崎検校。作詞は大坂の前田某という。正月子の日の若菜摘みの情景を歌ったもの。構成は,前歌-手事 (手事・中チラシ・本チラシ) -後歌。前歌の初めにみられる母音を伸ばした歌い方は,声明 (しょうみょう) を取入れたものといわれる。前歌および後歌の最後において,歌と三弦が同旋律となるのも特徴。手事は『八重衣』の手事と類似しており,チラシは『新浮舟』のチラシと合う。三弦は二上り。箏は平調子。のんびりとした春らしい曲調が好まれる。なお,箏組歌『四季の組』の第1曲目にも同名の曲がある。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「若菜」の解説

若菜
わかな

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
万治2.11(江戸・松平大和守邸)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の若菜の言及

【七草】より

…後世これらを七草粥にして正月7日に食べた。若菜は初春の若返りの植物であり,古くは正月初子(はつね)の〈子の日の御遊び〉に小松引きや若菜つみを行い,それらを羹(あつもの)にして食べたりしたが,のちに人日(じんじつ)(正月7日)に作られるようになった。もとは正月15日に七種の粥といって,7種の穀物(米,アワ,ヒエ,キビ,アズキ,ゴマ,子(みの))で作った粥を供御とする風があり,これと子の日の若菜とが結びついて七草粥となったとされ,一方,望(もち)の日の七種粥は小豆粥になった。…

※「若菜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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